RIETI-ANUシンポジウム

アジアの地域統合とグローバルエコノミー:経済安全保障への布石(議事概要)

イベント概要

  • 日時:2019年11月21日(木)14:00-17:00(受付開始13:30)
  • 会場:経済産業研究所セミナー室1121号室
    (東京都千代田区霞が関1丁目3番1号経済産業省別館11階)
  • 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)、オーストラリア国立大学(ANU)

国際的な経済安全保障に関する政策は世界中、特にアジア太平洋地域で、きわめて複雑な問題になりつつある。米国と中国という世界の二大経済・軍事大国の間で貿易摩擦が繰り広げられるなか、その他の国々は経済面でも戦略面でも困難な政策選択を迫られている。日本やオーストラリアのように、両大国の板挟みとなり、自国のサプライチェーンや繁栄、多国間ルールに基づく秩序が脅かされている国々はなおのこと、繁栄を確実なものとするために、米国との安全保障上の利益と中国との経済的利益を両立させる必要がある。

経済産業研究所(RIETI)とオーストラリア国立大学(ANU)が共催した本シンポジウムでは、幅広いトピックを取り上げ、特に日本とオーストラリアの国内および周辺地域における経済と安全保障に関するこうした側面について、いくつかの問題を提起した。オーストラリアからは3名の経済・公共政策の専門家を招き、日本の学界および政府からは数名が参加した。

議事概要

開会挨拶

中島 厚志(RIETI理事長)

本シンポジウムは、RIETIとANUの共催で行われるシンポジウムの第3回目となります。テーマは「アジアの地域統合とグローバルエコノミー:経済安全保障への布石」です。

アジア経済は世界経済のグローバル化と発展にきわめて大きな役割を果たしています。しかし、このところ米中間で貿易摩擦が起き、二国間関係が不安定な状況にあります。その結果、自由貿易体制が揺らぎ、国際的なサプライチェーンの分断や、貿易・投資を中心とする世界の経済活動の停滞をもたらしています。さらに、摩擦は貿易から知的財産や産業競争へと広がりつつあります。そのため、主要国が貿易・投資の管理を厳格化することによって、自国の経済や産業を保護しようとする動きが急増してきました。本シンポジウムでは、我々が直面する経済安全保障上のリスクと、そのリスクを乗り越えるために必要な取り組みについて議論したいと思います。

オーストラリアからは、基調講演を行っていただくゴードン・デ・ブラウワーANU名誉教授とクリストファー・フィンドレーANU名誉教授にご登壇いただきます。日本からは、保坂伸経済産業省貿易経済協力局長、浦田秀次郎早稲田大学教授、飯村亜紀子東京理科大学特任教授、岡田江平経済産業省貿易経済協力局審議官がパネルディスカッションに参加します。ANUのシロー・アームストロング先生にはパネルディスカッションのモデレータを務めていただきます。アジアの地域統合、グローバルエコノミーと安全保障について多くのことを学ばせていただきたいと思います。

基調講演

ゴードン・デ・ブラウワー(オーストラリア国立大学名誉教授 / 前オーストラリア政府環境エネルギー省次官、前首相・内閣省准次官兼G20シェルパ / オーストラリア公共サービス独立審査パネルメンバー)

現状について

この先数年間の世界経済成長率は3.5%と予測されていますが、ほとんどのリスクが下振れの方向であるため、非常に困難な見通しです。お馴染みの経済リスクが存在し、深刻かつ重大な安全保障リスクと相関しています。日本とオーストラリアにとっておそらく最も重要な2つの国である米国と中国が国際的な枠組みや制度を離れ、戦略的競争という立場の関係に移行しつつある、そんな世界に我々は突入しようとしています。これはかつて経験したことのない、非常に憂慮すべき変化です。

技術は経済と安全保障が一体となる分野です。デジタルデータは、各国経済にとって重要であるとともに、市場や制度の機能の仕方を変えつつあります。デジタルデータは、包摂的な経済成長をもたらすのに大いに役立つ可能性がありますが、市場や経済全体に劇的な変革をもたらすことになるかもしれません。サイバー攻撃への脆弱性を生み出す恐れもあります。

こうした問題をどのような枠組みにはめ込むかが実に重要です。日本やオーストラリアのような国にとって、経済か安全保障かという二者択一の枠組みで捉えることは何の役にも立ちません。中国は、政治的には相容れない国ですが、経済的には無視することのできない重要な存在です。日本もオーストラリアもアジア地域に位置しており、中国と共存し、付き合っていかなければなりません。米国は、世界の中でも傑出した軍事大国であるとともに、イノベーション、成長、アイデアを生み出す優れた国です。しかし、このところ、その動向はますます予測不可能なものとなっており、米国に過度に依存すべきではありません。

原則と戦略

この様な状況に対処するのにきわめて重要な2つの原則もしくは戦略があります。常に国益を考えるべきですが、国益には安全保障、繁栄、社会福祉という3つのとても重要な要素があります。何らかの問題や提案を考えるとき、我々はこれらの要素に立ち戻り、考える必要があります。場合によっては、リスクへの対処法は別のところで見つかる場合もあります。大事なのはリスク分析と実際的なリスク軽減です。

安全保障は公益として語られがちですが、国家が関与しない方法でリスクを軽減することを考える必要もあります。リスク軽減の多くは、民間企業の役割の強化と社会共同体における交流の強化によるものです。多くの場合、リスク軽減策は、企業や人々の行動様式や好みに深く根付いている方がはるかに効果的です。安全保障や繁栄という枠組みで議論しがちですが、社会的な側面もとても重要です。人と人との強固なつながりは、政府の極端な反応を和らげることができます。

いくつか具体例を見てみましょう。インフラに関しては、資金の出し手としてさまざまなプレーヤーを確保し、どこか一国の影響下に置かれないようにすることが重要です。また、その投資が国益に反して使われるリスクを緩和もしくは軽減する方法を考えることも重要です。外国からの投資については、リスクの所在と管理方法を特定することが重要です。外国投資を受け入れるということは、つまり、自国の成功の一次的利益を他国に与えるということですが、サイバー関連のリスクを考慮せねばなりません。サイバー関連リスクを管理するための強固な国内法制や保護策を整備しておくことが重要です。軍民両用技術については、当該技術の防衛・安全保障面をきわめて厳重に保護しながら、最先端を目指して競争し続けることが重要です。

国内制度と国際制度の強化

このような安全保障、繁栄、社会福祉に関する問題に対処するためには、どのように自国の政府の仕組みを設計すればいいのでしょうか。これらの問題について内閣がどのように語っているかが非常に重要だと思います。日本もオーストラリアも内閣制を採っており、各種委員会・会議体等がこれを支えています。安全保障を担当する委員会は安全保障については発言権を有していますが、繁栄や社会福祉については有していません。我々は伝統的にこれらの問題を別々に扱ってきたのです。内閣はこれらの問題をまとめて、率直で、開かれた、バランスの取れた議論を行う必要があります。

多くの国々で、外務もしくは内務担当省内に経済担当部局が、また、経済担当省内に安全保障担当部局がすでに設けられています。すばらしい一歩ではありますが、これで終わりではありません。異なる視点について議論するという点ですばらしい一歩ではありますが、最終的に各省がそれぞれの視点で物事を見ることになるという意味で終わりではないのです。分析ツールを駆使することが重要であり、首相府や内閣府のような別の組織がより広い視野に立った状況判断を行うようにする必要があります。

日本とオーストラリアはこれにどう対応していくのでしょうか。我々の暮らす世界では、国家の繁栄や安全保障が異なるさまざまなリスクに直面しています。そこでは、我々がこれまで頼りにし、関わりを持ってきた2つの大国が、これらの問題について極めて不安定で予測不可能な姿勢を取るようになっています。このような情勢に自国の方針を決められるべきではありません。自国の方針は自国で決めるべきです。各国が自らこうした問題に取り組み、国益を追求するべきです。自らの国益を他者に決められるべきではありません。そのために、アジア太平洋経済協力(APEC)や本日のシンポジウムのような対話の場は、大変貴重な手段なのです。

パネルディスカッション

モデレータ
  • シロー・アームストロング(RIETIヴィジティングスカラー / オーストラリア国立大学豪日研究センター長)
パネリスト
  • クリストファー・フィンドレー(オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授)
  • 保坂 伸(経済産業省貿易経済協力局長)
  • 浦田 秀次郎(RIETIファカルティフェロー / 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)
  • 岡田 江平(経済産業省貿易経済協力局審議官(貿易経済協力局担当))
  • 飯村 亜紀子(東京理科大学 研究戦略・産学連携センター 研究戦略部門長・特任教授)
  • ゴードン・デ・ブラウワー(オーストラリア国立大学名誉教授 / 前オーストラリア政府環境エネルギー省次官、前首相・内閣省准次官兼G20シェルパ / オーストラリア公共サービス独立審査パネルメンバー)

イントロダクション

シロー・アームストロング(RIETIヴィジティングスカラー / オーストラリア国立大学豪日研究センター長)

世界経済は大きな変化を遂げました。その中には、その変化に伴う経済的リスクや安全保障上のリスクも含まれます。米国は世界のリーダーとしての役割から退きつつあり、中国は国際的に存在感を増大させつつあります。そして、その両国間の戦略的競争が我々の政策選択を複雑なものにしています。今や、経済と安全保障は密接かつ明白に結びついているわけですが、それは、国家安全保障上もしくは地政学的な目的を果たすために経済的手段がしばしば用いられるという意味においてということです。こうした手法はたいていの場合、経済的に好ましくない結果をもたらし、国家安全保障を弱めることになると私は考えています。経済と安全保障の好循環を悪循環に転換してしまうのです。

米国と中国がこうした政策をとっているからといって、オーストラリアや日本など世界各国が同じ道をたどらなければならないというわけではありません。我々両国の政府は、こうした選択肢を異なる方法で比較検討していることと思いますし、省庁間ですらそうだろうと思います。経済と安全保障の間で我々両国が行う選択のバランスを考える必要があります。経済と安全保障の好循環に戻れるよう、選択肢を組み立て、正しい政策枠組みを構築しなければなりません。米国か中国かという選択を迫られる事態には陥りたくないのです。オーストラリアと日本は、まさにこの点において同じ課題に直面しており、官民ともに密接に協力していく必要があると思います。

プレゼンテーション

クリストファー・フィンドレー(オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授)

5G技術とその重要性

5G技術には変革力があり、経済に大きな影響を及ぼすことになると思われます。この技術には重要な防衛上の用途があり、さらなる侵入と混乱の機会をもたらします。こうした理由から、5G技術は安全保障関係者の注意を大いに引くところとなり、多くの国々で政策選択を促す要素となっています。

対応と決断

オーストラリアには、外国政府の指揮下に置かれる可能性の高い業者の関与を禁じる政策があります。リスク評価に基づくアプローチを用いた結果、禁止ということになったわけですが、より正確なリスク管理のために必要な範囲についてはさまざまな意見があります。法制度など、その他の制度の適用を検討すべきです。こうした課題に対応するための道具は相当揃っています。

米国などが適用した、禁止という手段の効果のほどは定かではありません。むしろ、安全保障上の利益と経済的な結果のトレードオフを考えると、中間的な地点に落ち着くことになりそうです。欧州各国はこのアプローチをとっているようです。東南アジア諸国の多くは、中国の技術にアクセスできることの利益にはるかに大きな関心を持っており、なかなかその機会を手放そうとはしません。

米国は先に、ファーウェイとの取引禁止を発表しました。米国の技術を守りたいということでしたが、私は、中国の成長に対する懸念という広い状況を踏まえてなされたことだろうと思っています。輸入の禁止にしろ、輸出の禁止にしろ、コストの高い選択肢であり、地理経済的な考え方がどういう影響をもたらすかを如実に示していると思います。協力的なアプローチは戦略的考慮に制約されるかもしれませんが、より多くの選択肢をもたらし、結果的にコストを抑制できる可能性があります。

プレゼンテーション

保坂 伸(経済産業省貿易経済協力局長)

日本の視点

日本は自由貿易を推進しており、その恩恵を大いに受けてきました。自由貿易を維持するというのが我々の立場です。世界を見渡すと、経済安全保障と自由経済のバランスをとる必要があります。米中間の摩擦は激化しつつあります。欧州では、個人情報保護優先から経済安全保障策がとられつつあります。こうした展開を踏まえて、日本は何らかの措置を講じる必要があります。

課題と解決策

経済産業省あるいは政府全体として、問題のありかを突き止め、どの技術を守る必要があるかについても議論しなければなりません。10年ほど前、中国によるレアアース(希土類)輸出制限を受けて、日本はレアアース輸入先の多様化を図り、現在では日本が輸入するレアアースの半分はオーストラリア産になっています。こうした輸入先の多様化は経済的安全保障に資するものです。この視点はさまざまな分野に取り入れる必要があると私は考えています。

さまざまな課題があります。外国為替及び外国貿易法改正法案が国会で可決され、日常的な安全保障上の規制を強化するための措置を講じることができるようになります。日本は外国から研究者を受け入れていますが、技術を盗む方法も多様化しているため、こうしたリスクに備える適切な枠組みをつくる必要があります。

政府が何らかの措置を講じることができる分野、そうすべき分野も存在します。重要な新技術については外国貿易管理という枠組みで処置を講じてきましたが、この分野は拡大しつつあり、対処方法を見直す必要があります。世界的な規模でさまざまな安全保障上の問題が顕在化しており、自由貿易とその他のリスク要因のバランスを最善のかたちで取り戻せるような解決策を見いださなければなりません。

プレゼンテーション

浦田 秀次郎(RIETIファカルティフェロー / 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)

国家安全保障と国際経済政策

米国政府が近年実施した一連の政策変更により、今日、経済と国家安全保障はきわめて重要なテーマとなっています。こうした政策変更の多くは国家安全保障上の目的で行われたものです。米中貿易戦争は現在進行中で、その結果、世界経済に大きな影響が出ています。より具体的に言うと、米中貿易が大きく減少し、両国の経済成長が損なわれています。影響はそれ以外の国々にも及んでおり、この問題は克服する必要があります。

アジア諸国の対応

グローバルバリューチェーン(GVC)やこれに類似したネットワークの構築は、アジアの経済成長を実現する最善の手段でした。さらなる経済成長を実現するには、GVCを進展させるとともに貿易投資の一層の拡大を図る必要があります。

日本は、TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定:CPTPP)の締約国ですが、同協定のルールは厳格に定められ、環太平洋地域に広く適用されます。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、中国も加盟していることから、重要な役割を果たすことになりそうです。まずはRCEPを成功させ、その上で、中国にTPP11への参加を促す必要があるでしょう。これが実現すれば、非常に好ましい状況が生まれることになります。世界貿易機関(WTO)改革も推進すべき課題です。この点において、日本とオーストラリアは大変重要な役割を果たすことができます。

国家安全保障については、資本、デジタルエコノミー、エネルギー、天然資源といった分野が今後重要になってくるでしょう。我々は、これらの課題について議論し、連携協力し、適切な国際ルールを策定・実施し、さらなる摩擦を回避しなければなりません。

Q&A

飯村:
中国の「一帯一路構想(BRI)」と「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という枠組みの類似点と相違点は何でしょうか。

デ・ブラウワー:
2つのアプローチの美辞麗句にはあまり目を向け過ぎないようにしようと思いますが、これらは特殊な経緯を背景に出てきたもので、それぞれ国内にアピールするものです。

アームストロング:
一帯一路構想は進化していますが、とてつもなく大きな問題が出てきています。これまでのところは事実上、失敗です。第三国市場における日中共同インフラ投資プロジェクトは、中国が他国の意向や関与を受け入れようとしていることの表れでしょう。

岡田:
技術的な観点から見て、中国企業にしかできないことは何かあるのでしょうか。

フィンドレー:
機器や技術を提供できる非中国企業は存在します。優れた制度とはこれらの企業が互いに競い合うことのできる開かれた制度だと、私は思います。

飯村:
ノキアやエリクソンのような非中国企業は技術的に対応できると思います。違いはコスト要因なのではないでしょうか。中国企業は安いコストで対応できます。

アームストロング:
オーストラリアは、同国の5Gネットワークにおいてはファーウェイや中国の技術を関与させないとの方針を明確に示しました。どういう理由でそうなったのでしょうか。リスク評価や意思決定の仕組みが他の国とは異なるということでしょうか。

フィンドレー:
リスク評価は適用されたものの、結果は、伴うリスクについての強い認識によってもたらされたものだろうと考えています。きわめて一方的なやり方で意思決定が行われたというのが、私の見方であり懸念です。APECのような協調的な状況で行われていたら、検討し得る選択肢はもっとあったかもしれません。

飯村:
リスク分析の結果は一部の国々で共有されていることと思いますが、国によって法制度枠組みが異なるので、リスク軽減のための措置は各国異なる可能性があると思います。

アームストロング:
政府の介入をどう正当化できるのでしょうか。

浦田:
補助金については、理論づけができるかもしれませんが、他の国々も同様に補助金を出すようになれば底辺への競争になり、資源の無駄遣いになります。特定の場合において政府の介入は正当化し得ると思いますが、他の国々の行動などを考慮するゲーム理論の視点を持つことがきわめて重要です。

岡田:
技術は常に進歩しているので、新たな技術とその技術が国家安全保障に及ぼす影響について調査し続ける必要があります。

フィンドレー:
政府の介入がやるだけの価値のあることかどうかについては、具体的に検討し、複数の解決策を提示し、信頼できるデータを見つけ、適切な選択ができるようにする必要があります。公共政策の意見を含めるのも有益かもしれません。

アームストロング:
小国はどうやってリスク軽減を図ればいいのでしょうか。

岡田:
以前は一部のアフリカ諸国は中国の強い影響下にあるように見えましたが、アフリカ諸国も変わりつつあります。

浦田:
しっかりとしたルールがあれば、そのルールを頼りにすることができます。現時点では、中国と中国の要望に対処するためのルールが存在しません。

アームストロング:
実のところ中国は、WTOではルールの遵守という点において非常に優れた実績を示しています。問題はグレーゾーンやルールが存在しない領域です。中国に関するルールをつくるのではなく、中国と一緒にルールをつくる必要があります。

デ・ブラウワー:
力の不均衡がある場合は、大国を小国に置き換えるか、集団行動を通じて自国が大きくなるかです。

アームストロング:
インドのRCEP離脱についてはどういう考えをお持ちですか。交渉妥結という報道がありましたが、最後の最後になって国内圧力に負けて、モディ氏が合意内容の一部を反故にしてしまいました。私は、インドに対しては扉を開いたままにした上で、基準に関しては何ら妥協することなく合意への参加を促しながら、RCEP合意に向けて交渉を進めることが重要だと思います。

岡田:
個人的には、インド抜きのRCEPはあまり意味がないと思います。インドの参加を促す上で、日本は過去に実施した構造改革の経験をインドと共有できるのではないかと思います。

アームストロング:
中国のダーウィン港への投資の件については、どういうときに所有権の問題が重要になってくるでしょうか。

デ・ブラウワー:
ほとんどの場合、安全保障における所有権の重要性は誇張されているように思います。一般的に、これらは切り離せるものです。所有権を阻止しても、実際にリスクに対応することにはならないかもしれないし、優れたリスク軽減・対応の方法がすでに存在します。

アームストロング:
日韓の現状を打開するための出口戦略はどんなものでしょうか。

飯村:
当初の、日本政府側から発出された特定の発言には、が日本の当該措置は対抗措置であることを示すものとして受け止められたものが残念ながらありました。これは残念なことでしたがが、状況は動きつつあります。日本は、日本がやっていることをグローバル社会に説明する必要があると思います。

アームストロング:
ルールではなく力がものをいう世界になりつつあります。個別に、また共同で、取り組むべき優先課題は何でしょうか。

デ・ブラウワー:
どこかの国がルールなんて関係ないと言えるような状況を許すべきではありません。われわれが構築してきたルールに基づく枠組みを強化し、我々の市場の開放と自由化を進めるべきです。

フィンドレー:
RCEPの枠組みを運営していくために、集団的利益を共有する国々を探し出すべきです。このことは、今後、きわめて重要になってくると思います。

岡田:
安倍首相は先の国会で、財政健全性、開放性、透明性、経済性という4つの条件が満たされる案件なら、一帯一路構想に日本が協力できるかもしれないと明言しました。

飯村:
一帯一路構想と自由で開かれたインド太平洋には相互補完的な要素があると思います。その2つは二者択一であるべきではありません。2つを組み合わせた、ルールに基づく枠組みが実現してほしいと思います。