ワークショップ概要
- 日時:2013年1月21日(月) 午後1時00分~4時30分
- 基調講演:ドナ・ケリー (バブソン大学准教授)
- 研究報告:高橋 徳行 (RIETIファカルティフェロー / 武蔵大学教授)、本庄 裕司 (中央大学教授)、安田 武彦 (東洋大学教授)、鈴木 正明 (日本政策金融公庫総合研究所上席主任研究員)
- パネルディスカッション:ドナ・ケリー (バブソン大学准教授)、各務 茂夫 (東京大学教授)、黒木 正樹 (立命館大学教授)、小門 裕幸 (法政大学教授)
- 司会:高橋 徳行 (RIETIファカルティフェロー / 武蔵大学教授)
基調講演の主なポイント
ドナ・ケリー准教授は、「2012年GEM(Global Entrepreneurship Monitor)調査」結果について講演した。主な内容は、(1)GEM調査の仕組み、(2)起業態度、特に事業機会の認識と失敗への恐れに見られた特徴、(3)起業活動、特に年齢別と性別に見られた特徴、(4)地域別の起業活動と起業態度、特に米国とアジアに見られた特徴の4点である。アントレプレナーシップの国別、もしくは地域別の特徴を捉えようとする時、ひとつの指標だけを見ても不十分であること(たとえば、日本もタイも失敗への恐れは強いが、起業活動については、日本は低く、タイは高い)、国や地域の文化や経済状況の違いを踏まえて判断することが重要である。GEMはその基礎データを提供するのであって、国や地域の状況を踏まえた調査は、それぞれのナショナルチームに任されている。なお、ドナ・ケリー准教授はGEMの米国チームのリーダーを務めている。
研究報告の主なポイント
高橋ファカルティフェローは、RIETIにおけるプロジェクトの概要説明を行った。今回の主要なテーマが起業「活動」と起業「態度」の関係性を明らかにすることであり、そのためになぜ「個票」を使った分析が必要なのかを話した。本庄教授は、起業活動と起業態度がどのように推移し、また他の先進国と比べての特徴について報告した。また、個人投資家活動と起業活動の共通点と異なる点についても触れた。安田教授は、起業活動に従事せず、起業態度もないグループを「起業無縁者」として、起業無縁者が日本では圧倒的多数を占めており、このグループが起業活動全体に抑圧的な力を及ぼしている可能性を示唆した。鈴木上席主任研究員は起業活動を、事業機会型と生計確立型に分けて、日本と他の先進国との違いは前者によるところが大きいこと、また起業態度、特に「知識・能力・経験」に関する指標をコントロールすると、起業活動に関する日本と他の先進国の違いはほとんどなくなるという報告を行った。
パネルディスカッションの主なポイント
黒木教授と各務教授から、それぞれの大学、大学院でのアントレプレナーシップ教育に対する取り組みの報告、小門教授からは日本人の精神的自立(自律)の欠如と起業活動の低迷の関係についての報告を受けた後、ドナ・ケリー准教授を交えてパネルディスカッションを行った。日米のアントレプレナーシップ教育の違いを考えた時、学生の起業態度の違いが大きく影響していること、バブソン大学でもビジネスプラン重視の姿勢を緩和し、実践から学ぶ要素を多く取り入れるようにしているなど常に改善を試みていること、日本も戦後は起業活動の活発な国であったことを踏まえると現状をどのように捉えることができるのかなどをテーマに議論が行われた。