RIETI-RANDシンポジウム

高齢者パネルデータから学んだものは何か:くらしと健康の向上のために

開催案内

高齢化の進展の中で社会保障制度をどうやって持続可能なものにしていくのかをはじめ高齢者を巡る経済、健康などの問題は、日本にとって最重要の課題の1つです。ところが、厳しさを増す財政状況もあり、議論は社会保障の財源論にとらわれがちです。もちろん財源論は重要なイシューであり、疎かにできるものではありませんが、限られた経済資源のなかでは、効率的に機能する諸制度のあり方がもっと盛んに議論されなければなりません。

議論が深まりを見せない理由の一つは、日本の高齢者の実態を多面的に捉えた統計データが不足していることにあります。高齢者は経済・健康・家族・社会関係のどの側面を見ても実に多様な存在です。そこで、先進各国では、高齢者の実情を捉えるために、大規模なパネル調査(追跡調査)を実施して、政策判断の為の重要なインフラとして活用しています。日本でも、経済産業研究所(RIETI)を中心として、2007年から世界標準の大規模高齢者パネル調査(「くらしと健康の調査」Japanese Study of Aging and Retirement, JSTAR)を実施しています。

今回のシンポジウムでは、アメリカ、ヨーロッパを初めとして、世界各国で実施されている高齢者パネル調査を設計、指揮する最先端の研究リーダーに集結してもらい、これらのデータが、高齢者のどのような実像を明らかにし、現実の政策決定にどのように活用されているのか紹介します。また、「くらしと健康の調査(JSTAR)」から見えてくる、日本の高齢者の実像と、あるべき政策への含意を、世界の研究者とともに議論していきます。議論の中では、高齢者の健康、医療、年金、所得、雇用状況が多面的、横断的に分析され、多面的パネル調査の重要性が明らかになります。

イベント概要

  • 日時:2011年7月29日(金)10:00-18:05
  • 会場:東海大学校友会館 阿蘇・東海の間 (東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル35階)
  • 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳あり)
  • 参加費:無料
  • 主催:独立行政法人経済産業研究所、ランド研究所
  • お問合せ:RIETI 原田 朋子 Tel: 03-3501-8398、Fax: 03-3501-8416

プログラム

10:00 - 10:10 開会挨拶

藤田 昌久 (RIETI所長・CRO / 甲南大学教授 / 京都大学経済研究所特任教授)

Arie KAPTEYN (ランド研究所労働・人口研究部門ディレクター)

10:10 - 10:15 特別挨拶

吉冨 勝 (RIETI特別顧問)

10:15 - 10:55 講演

Longitudinal Aging Data for Behavioral and Social Research

John W. R. PHILLIPS (米国国立老化研究所(NIA)行動・社会調査プログラム)

Q&A

10:55 - 14:20 セッション1: パネルデータから分かる世界の高齢化の現状

セッションチェア: 市村 英彦 (RIETIファカルティフェロー / 東京大学大学院経済学研究科、公共政策大学院教授)

プレゼンテーション: 日本版くらしと健康の調査(JSTAR)の概要、意義とそれから分かる日本の高齢者の真の姿

市村 英彦 (RIETIファカルティフェロー / 東京大学大学院経済学研究科、公共政策大学院教授)

プレゼンテーション: A Comparative Study of Well-being in the US, the UK, and Continental Europe

Arie KAPTEYN (ランド研究所労働・人口研究部門ディレクター)

Q&A

プレゼンテーション: Health and Early Retirement: Policy lessons from international comparisons

Axel BÖRSCH-SUPAN (マックスプランク社会法・社会政策研究所ミュンヘン高齢化の経済学センター(MEA)ディレクター)

プレゼンテーション: Cognitive Health of Older Indians: Individual and geographic determinants of female disadvantage

Jinkook LEE (ランド研究所上席エコノミスト)

Q&A

14:40 - 16:10 セッション2: パネルデータから医療政策を考える

セッションチェア: 橋本 英樹 (東京大学大学院医学系研究科教授)

プレゼンテーション: Should Medicare Reform Target Incentives for Providers or Patients?

David WEIR (ミシガン大学調査研究センター教授 / 健康と引退に関する研究(HRS)ディレクター)

プレゼンテーション: Understanding Health Differences Between England and the United States

James P. SMITH (ランド研究所 Distinguished Chair in Labor Markets and Demographic Studies)

プレゼンテーション: 日本の高齢者の医療と健康に関する分析

橋本 英樹 (東京大学大学院医学系研究科教授)

Q&A

16:30 - 18:00 セッション3: パネルデータで考える高齢者の働き方

セッションチェア: 清水谷 諭 (RIETIコンサルティングフェロー / 財団法人世界平和研究所主任研究員)

プレゼンテーション: Mental Retirement: National-level policy variations and pooled cross- sectional data from HRS, ELSA, and SHARE to identify a causal effect of early retirement on cognition

Robert WILLIS (ミシガン大学教授)

プレゼンテーション: 日本の高齢者の引退プロセスと社会保障

清水谷 諭 (RIETIコンサルティングフェロー / 財団法人世界平和研究所主任研究員)

プレゼンテーション: Were They Prepared for Retirement? Financial Status at Advanced Ages in the HRS and AHEAD Cohorts

David WISE (ハーバード大学ケネディ行政大学院教授)

Q&A

18:00 - 18:05 閉会挨拶

中島 厚志 (RIETI理事長)

*上記プログラムの講演内容および講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。