RIETI政策シンポジウム

Quo Vadis the WTO?:ドーハラウンドの将来と国際通商レジームの管理

開催案内

開始から6年になろうとするドーハ・ラウンドの停滞により、世界貿易機関(WTO)を中心とする多角的貿易体制は危機に瀕しているのではないかと言われています。特に、昨夏の交渉無期延期の決定により、事態の混迷は決定的になったかのようにさえ思われました。幸い年初から徐々に交渉が再開され、ラミーWTO事務局長もさまざまな機会を捉えて交渉推進の突破口を探り、主要国のリーダーシップ発揮を訴えてきました。また、加盟国側も主要国を中心に、合意の枠組みへの意見集約を模索し、交渉のモメンタムが生まれつつあります。にもかかわらず、今夏以降の展開については、依然として予断を許さない状況にあります。

このラウンドの難航は、WTOの「立法」機能、すなわち新たな通商ルール策定の機能の低下を意味します。このため、国際社会には代替的な手法によって国際通商レジームの維持・管理を行う必要が生じています。まず、WTOで新たなルール策定が難しいとなれば、世界各地で急増している地域貿易協定(RTA)の法制度化が代替的な貿易自由化推進のための手段となる状況が生まれます。他方、WTO内では、交渉による新たなルール策定が難しいとなれば、WTOの意義は、紛争解決手続によるレジーム管理に求められることになります。

本シンポジウムの目的の1つは、こうした代替的な通商レジームの管理手段の評価を行うことにあります。そこで、第1部ではRTAの法制度化(legalization)に焦点を当て、WTOとの比較でどこまで進行しているか、それはWTOに代替しうる制度か、またRTAとWTOとが併存した場合に両者のインターフェイスで問題が生じるか(無差別原則との抵触、管轄権の競合など)等の問題を討議します。また、第2部の報告の一部はWTO紛争解決手続のルール策定機能に言及し、新しいルールを作らずに紛争解決のみで自由貿易秩序の維持は可能か、それは必然的に上級委員会による法創造・司法積極主義を意味するのか、上級委員会はWTO加盟国政府や関係者からそこまでの信頼を勝ち得ているのだろうか等の問題について議論を展開します。

他方、以上のようなWTOにおけるルール策定・市場開放交渉に代替する紛争処理及び地域レジームによる通商政策管理は有用であるとはいえ、やはり、依然としてWTOのルール策定機能を再活性化することが問題解決の本道です。そのために、第2部では、日本、欧州、インド、WTO事務局から有識者を招き、紛争解決手続の結果とラウンド交渉の相互作用を検証し、ラウンド成功の方途を探ります。これら一連の検証を通じて有用な政策提言を導き出すことが、本シンポジウムのもう1つの目的となります。

本シンポジウムでは、内外の通商法・政策の専門家及びご参加の皆様と通商体制の現状認識とラウンド推進の必要性について意見交換を行うことを通じ、通商政策についての国民的議論の一層の発展に貢献できることを希望いたします。

イベント概要

  • 日時:2007年8月6日(月) 9:45-17:55
  • 会場:東海大学校友会館 阿蘇の間 (東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル33F)
  • 開催言語:日本語⇔英語(同時通訳あり)
  • 参加費:1000円(交流会費を含む)[公印を捺印した領収書を発行いたします。]
  • 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
  • お問合せ:RIETI 加瀬知子 Tel:03-3501-8398

※シンポジウム終了後、インターネットにて当日の模様の一部をビデオ映像でご紹介(動画配信)する予定です。また資料も後日、本サイトからダウンロードしていただけます。

【シンポジウム映像の撮影と利用について】

プログラム

総合司会:谷本 桐子 (RIETIウェブ・編集担当マネージャー)

9:45 - 9:50 開会挨拶

藤田 昌久 (RIETI所長・CRO/甲南大学教授/京都大学経済研究所特任教授)

9:50 - 10:05 「はじめに:国際通商レジームの現在」

川瀬 剛志 (RIETIファカルティフェロー/大阪大学大学院法学研究科准教授)

10:05 - 12:15 第1部「代替レジームとしての地域経済統合-その法制度化とWTOのインターフェイス」

セッションチェア:荒木 一郎 (横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授)

10:05 - 10:25 プレゼンテーション「関税および市場アクセス」

KIM Jong Bum (Associate Professor, KDI School of Public Policy and Management)

10:25 - 10:45 プレゼンテーション「紛争解決手続」

川瀬 剛志 (RIETIファカルティフェロー/大阪大学大学院法学研究科准教授)

10:45 - 11:05 プレゼンテーション「知的財産権」

鈴木 將文 (名古屋大学大学院法学研究科教授)

11:05 - 11:25 プレゼンテーション「サービス(第4モード)」

東條 吉純 (立教大学法学部教授)

11:25 - 11:45 プレゼンテーション「日本のEPA/FTA戦略」

田中 繁広 (経済産業省通商政策局経済連携課長)

11:45 - 12:15 Q&A

12:15 - 13:20 昼食交流会(立食形式)

13:20 - 17:50 第2部「通商レジームの将来とWTOの役割」

13:20 - 14:20 第1セッション

セッションチェア:川瀬 剛志 (RIETIファカルティフェロー/大阪大学大学院法学研究科准教授)

13:20 - 13:40 プレゼンテーション「WTO事務局から見たラウンドの現状」

S. Bruce WILSON (Director, Legal Affairs Division, WTO)

13:40 - 14:00 プレゼンテーション「紛争解決手続と貿易自由化交渉-ウルグアイラウンドの経験に学ぶ」

荒木 一郎 (横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授)

14:00 - 14:20 プレゼンテーション「我が国産業にとってのWTOの意義」

金原 主幸 (日本経済団体連合会国際第一本部長)

14:20 - 14:35 コーヒーブレイク

14:35 - 15:35 第2セッション

セッションチェア:荒木 一郎 (横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授)

14:35 - 14:55 プレゼンテーション「通商レジームのあり方についてのECのアプローチ」

Marco C. E. J. BRONCKERS (Partner, Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr LLP)

14:55 - 15:15 プレゼンテーション「インドから見た通商レジームの将来」

Anwarul HODA (Member, Planning Commission, Government of India)

15:15 - 15:35 プレゼンテーション「なぜWTOドーハ・ラウンドは重要なのか」

広瀬 直 (経済産業省通商政策局通商機構部参事官)

15:35 - 15:50 コーヒーブレイク

15:50 - 17:50 パネルディスカッション

モデレータ:川瀬 剛志 (RIETIファカルティフェロー/大阪大学大学院法学研究科准教授)

15:50 - 16:10 「総括コメント:ドーハラウンドおよびその通商レジームの将来に対する意義」

小寺 彰 (RIETIファカルティフェロー/東京大学大学院総合文化研究科教授)

16:10 - 17:10 パネルディスカッション

小寺 彰 (RIETIファカルティフェロー/東京大学大学院総合文化研究科教授)

S. Bruce WILSON (Director, Legal Affairs Division, WTO)

Marco C. E. J. BRONCKERS (Partner, Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr LLP)

Anwarul HODA (Member, Planning Commission, Government of India)

広瀬 直 (経済産業省通商政策局通商機構部参事官)

17:10 - 17:50 Q&A

17:50 - 17:55 閉会挨拶

及川 耕造 (RIETI理事長)

*S. Bruce WILSON氏の発言は全て引用禁止です。
*上記プログラムの講演内容及び講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。