開催案内
金融機関が企業のパフォーマンスに果たす役割については、長い間、肯定・否定両方の見方から論じられてきました。メインバンクが企業の長期的な視野に立った経営を支えているという見解もあれば、金融機関はバブル期に審査能力を失った上、貸し渋り・追い貸しといった行動を通じて企業経営に悪影響をもたらしているという厳しい意見もあります。
最近、企業と金融機関との密接な関係を通じて付加価値が創造されるというリレーションシップバンキングの考え方が注目されています。これは、不良債権問題を克服し、日本の金融システムの正常化を図る上でも、企業と金融機関との関係を再構築すべきであるという問題意識の表われに他なりません。
金融機関と企業の関係が企業活動や経済全体にどのように影響しているのか、金融機関間の競争や再編が借り手にプラスの効果をもたらすのかといった点について、実際に分かっていることは必ずしも多くありません。特に、未だ金融機関との関係に大きな影響を受ける中小企業については、個別事例に基づく推論はあっても、データに基づいた分析は限られています。
今回のシンポジウムでは、第1部の4つのセッション(2月16日午後および17日午前)において、当研究所での研究成果をもとに、企業の生成から破綻・再生に至るまでの各プロセスにおける金融機関の役割や、間接金融市場の構造などについて、議論をします。土台となるのは、近年急速に整備された中小企業に関するデータベースなどを最大限に活用した実証分析の成果です。このために、海外からも、バンキング研究の第一人者と呼ばれる方々をお招きしています。第2部(17日午後)では、岩田一政日本銀行副総裁に金融システムに関する講演をしていただくとともに、内外の有識者によるパネルディスカッションを行い、議論を深めます。
実務家から研究者までの幅広い参加を得て、本シンポジウムの成果が、将来のわが国金融システムを考える上で示唆に富むものとなるようにしたいと考えています。
イベント概要
- 日時:2006年2月16日(木)13:30-17:10
2006年2月17日(金)9:00-17:00 - 会場:新生銀行ホール (千代田区内幸町2-1-8 新生銀行本店1階)
- 開催言語:日本語⇔英語(同時通訳あり)
- 参加費:2000円(交流会費を含む)[公印を捺印した領収書を発行いたします]
(学生証提示の場合は、1000円) - 主催:独立行政法人経済産業研究所
- お問合せ:RIETI 笠原智子 加瀬知子 Tel:03-3501-8398 Fax: 03-3501-8416
※シンポジウム終了後、インターネットにて当日の模様の一部をビデオ映像でご紹介(動画配信)する予定です。また資料も後日、本サイトからダウンロードしていただけます。
プログラム 2006年2月16日(木)
総合司会:木村貴子 (RIETI)
13:30-13:40 開会挨拶
吉冨 勝 (RIETI所長・CRO)
13:40-15:20 セッション1:「リレーションシップバンキングの機能~資金調達・企業活動への影響」
セッションチェア:植杉 威一郎 (RIETI研究員)
13:40-14:00 プレゼンテーション:「金利と企業年齢との関係」
渡辺 努 (RIETIファカルティフェロー/一橋大学経済研究所教授)
14:00-14:20 プレゼンテーション:「銀行と中小企業のリレーションシップに影響を与える諸要因」
内田 浩史 (和歌山大学経済学部助教授)
Gregory F. UDELL (インディアナ大学ケリービジネススクール教授)
14:20-14:40 プレゼンテーション:「メインバンクの財務状況と企業行動」
小川 一夫 (大阪大学社会経済研究所教授)
14:40-15:00 コメント
堀内 昭義 (中央大学総合政策学部教授)
15:00-15:20 ディスカッション
15:20-15:30 コーヒーブレーク
15:30-17:10 セッション2:「中小企業の信用補完には何が望まれるか~担保、保証、公的制度の役割」
セッションチェア:渡辺 努 (RIETIファカルティフェロー/一橋大学経済研究所教授)
15:30-15:50 プレゼンテーション:「日本の中小企業金融における担保・個人保証の決定要因」
小野 有人 (みずほ総合研究所政策調査部上席主任研究員)
15:50-16:10 プレゼンテーション:「政府による中小企業向け信用保証には効果があるのか」
植杉 威一郎 (RIETI研究員)
16:10-16:30 プレゼンテーション:「担保や信用保証は貸出金利に正しく反映されているか」
渡部 和孝 (東北大学大学院経済学研究科助教授)
16:30-16:50 コメント
平井 裕秀 (経済産業省中小企業庁事業環境部財務課長)
16:50-17:10 ディスカッション
17:10-19:00 交流会
*上記プログラムの講演内容及び講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。
プログラム 2006年2月17日(金)
総合司会:木村貴子 (RIETI)
9:00-10:40 セッション3:「企業再生においてリレバンは重要か~金融機関、再生ファンドと公的機関の提携と役割分担」
セッションチェア:広瀬 純夫 (信州大学経済学部講師)
9:00-9:20 プレゼンテーション:「銀行企業関係と中小企業の法的整理方法の選択」
胥 鵬 (RIETIファカルティフェロー/法政大学経済学部教授)
9:20-9:40 プレゼンテーション:「地域再生ファンドと地域金融機関の関係について」
松尾 順介 (桃山学院大学経営学部教授)
9:40-10:00 プレゼンテーション:「中小企業再生をめぐる諸施策の展開と地域金融機関の役割」
田頭 章一 (上智大学法科大学院教授)
10:00-10:20 コメント
安田 武彦 (RIETIファカルティフェロー/東洋大学経済学部教授)
10:20-10:40 ディスカッション
10:40-10:50 コーヒーブレーク
10:50-12:30 セッション4:「間接金融の市場は十分競争的か~金融機関再編の影響」
セッションチェア:植村 修一 (RIETI上席研究員)
10:50-11:10 プレゼンテーション:「金融機関と金融市場の競争度」
筒井 義郎 (RIETIファカルティフェロー/大阪大学社会経済研究所教授)
11:10-11:30 プレゼンテーション:「信用金庫の合併効果」
鶴 光太郎 (RIETI上席研究員)
11:30-11:50 プレゼンテーション:「銀行の合併・再編が中小企業向け貸出に及ぼす影響」
Allen N. BERGER (米連邦準備制度理事会調査統計局シニアエコノミスト)
11:50-12:10 コメント
高田 創 (みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長/チーフストラテジスト)
12:10-12:30 ディスカッション
12:30-13:30 ランチ
13:30-14:30 講演:「日本の金融システムの将来像」
岩田 一政 (日本銀行副総裁)
14:30-14:50 コーヒーブレーク
14:50-16:50 パネルコメント・ディスカッション:「今、日本の金融システムに求められるもの~何が欠けているか」
コーディネーター:植村 修一 (RIETI上席研究員)
ディスカッサント
翁 百合 (日本総合研究所調査部主席研究員)
川上 尚貴 (金融庁監督局銀行第二課長)
Mark M. SPIEGEL (サンフランシスコ連銀バイス・プレジデント、太平洋研究センター長)
藤井 良広 (日本経済新聞社経済部編集委員)
家森 信善 (名古屋大学大学院経済学研究科教授)
16:50-17:00 閉会挨拶
及川 耕造 (RIETI理事長)
*上記プログラムの講演内容及び講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。
参考リンク
- 岩田一政(日本銀行副総裁)講演要旨「日本の金融システムの将来像」