政策シンポジウム他

女性が活躍できる社会の条件を探る

開会挨拶

吉冨 勝 (RIETI所長・CRO)

独立行政法人経済産業研究所所長の吉冨です。皆様、RIETI政策シンポジウム、「女性が活躍できる社会の条件を探る」にようこそおいでいただきました。また、講師の皆様にはお忙しい中、ご参加頂き感謝申し上げます。このシンポジウムは今年度に入りましてからまた、同時にこの春私が当研究所に就任してから、4回目を数えるRIETIの政策シンポジウムです。

女性が職場に参加して能力を十分に発揮するためには、次の3つの面でさまざまな制約があります。(1)労働市場に入る前の要因としての教育、(2)労働市場すなわち主として職場で発生する問題、および、(3)本人と家族との関わり、の3つです。

これまで、(2)の労働市場に関しては、雇用機会均等法による法的環境整備などを通し、前進が見られました。また、(2)の労働市場と(3)の家族の両方に関わる問題として重要な「仕事と子育ての両立」に関しては、育児・介護休業法や保育所の整備等による外的支援環境整備が、均等法成立以前に比べると一定の前進を見ました。それにもかかわらず女性の登用が進まないのはなぜでしょうか。

本シンポジウムでは、労働市場や子育ての外的支援環境に残る問題点を踏まえつつも、従来、政策論としては十分には議論されてこなかった点に焦点をあてようと思います。つまり上述(1)の教育の役割、および、(3)の本人と家族との関わりにおける問題点に焦点を当て、また、(2)の労働市場に関しても、女性の就業形態は男性型のキャリアばかりではなく多様な形態がありうることを踏まえるなど、新たな視点からの議論を行います。

具体的には、仕事と子育ての両立に関して、まず「子育て支援のあり方の国際比較」を行ったあと、「男性の家事・育児参加の可能性」を検討するとともに、「子供の能力形成における母親の役割の増大」を直視した上での支援策を検討します。

また、新規学卒者の正規雇用は縮小しています。また女性の大学進学率は上昇しています。こうしたことなどに伴い「女性の能力育成に関して学校教育と労働市場にミスマッチが生じている可能性」などを指摘します。

さらに、女性が志向する就業形態は多様であることに着眼し、「非正規労働の基幹労働化とその処遇改善が女性の就業選択の幅を広げる可能性」を論じたいと思います。それとともに、「男女共同参画の意味を位置づけた経済成長モデルを使って、成長につながる女性活用策の検討」を行います。

これらの論点についての研究から直ちに具体的な政策提言が導けるとは限りませんが、こうした研究成果が、女性がいきいきと働ける社会を作るための政策の基盤作りに役立てば幸いであります。

本日は、このような観点からの研究の第一線で活躍されている専門家の方々、あるいは教育や男女共同参画などの政策に携わる方々に、スピーカー、コメンテータ、パネリストとして多数ご参加いただきます。さらに、本日、会場にお集まりの皆様も含め、活発で突っ込んだ議論がなされることを心から期待しています。

この経済産業研究所・RIETIは、日本経済が当面する最も重要な政策課題について研究し、現状の問題点とそれへの処方箋について客観的、分析的に賛成論、反対論を共に明示し、国民の皆様に貴重な判断材料を提供することを大きな目的にしております。このシンポジウムがこの目的へ一歩でも接近することが出来れば、RIETIにとっても最大の収穫であります。

ご静聴ありがとうございました。