政策シンポジウム他

21世紀の農政改革-WTO・FTA交渉を生き抜く農業戦略-

開催案内

WTO・FTA交渉では農産物の大幅な関税引き下げが要求されます。これまでは、農家保護の目的で、高い関税(米、490%)をかけ外国の農産物の輸入を制限し、農家が高い価格で農産物を売れるよう、価格支持政策をとってきました。

そこで関税を大幅に引き下げると、農産物価格が低下して農家所得が減少します。この問題に対応するためには、農家所得の減少に見合った直接支払いを政府が財政負担により行うことが考えられます。換言すると、価格支持政策は消費者に直接負担を強いますが、上記の直接支払いによる所得保障は納税者に負担を強います。確かに、価格支持政策から直接支払いへの転換は、農産物の輸入自由化対策としては大きく貢献します。

しかし、そこには大きな問題が残ります。それは、対象農家を限定しない一律の直接支払いだけでは、農業の効率化は図れないことです。

日本では、価格維持政策の下、この40年間で第2種兼業農家の比率は3割から7割へ、65歳以上高齢農業者の比率は1割から6割近くへ上昇、食料自給率は8割から4割へ低下するなど農業の衰退傾向に歯止めがかかりません。国民・消費者への食料供給を考えると憂慮する事態です。EUでは価格支持政策が行われる以前から構造改革のための政策が強力に実行され、農業の規模拡大、効率化が相当進んでいます。日本では構造改革が充分に行われないまま価格政策による一律的な農家保護が実施されたため、零細な農業構造が温存され、農業は非効率なままとなっています。

そのため、日本においては、単に関税引き下げに対処するためだけの直接支払いではなく、構造改革効果を伴った直接支払いの導入が不可欠です。その構造改革では、直接支払いを一定規模(たとえば3ha)以上の土地を保有する米作農家に限定することが重要です。実際、生産効率の向上を伴わない直接支払いの転換だけでは、財政負担も膨大なものとなるだけでなく、国際競争に勝ち抜く農家を育てることができません。

本シンポジウムでは、米国やEUの経験を織り込んだOECDの提言や世界の農政改革を踏まえながら、国際化に勝ち抜く強い農業を実現するために、農政改革、特に直接支払いの具体的な姿はいかにあるべきかを議論します。

イベント概要

※シンポジウム終了後、インターネットにて当日の模様の一部をビデオ映像でご紹介(動画配信)する予定です。また資料も後日、本サイトからダウンロードしていただけます。

【シンポジウム映像の撮影と利用について】

プログラム

13:00-13:10 開会挨拶

吉冨 勝 (RIETI所長・CRO)

13:10-14:00 基調講演-農政改革の方向-

Ken ASH (OECD農業局次長)

14:00-14:05 日本農業の現状からのコメント

山下 一仁 (RIETI上席研究員)

14:05-14:15 休憩(コーヒーブレイク)

14:15-15:45 第1部 農政改革の必要性と改革の方向

パネルディスカッション

司会:今野 秀洋 (早稲田大学大学院客員教授)

パネリスト

北川 正恭 (早稲田大学大学院教授)

木村 福成 (慶應義塾大学教授)

高木 勇樹 (農林漁業金融公庫総裁)

八木 宏典 (東京大学大学院教授/食料・農業・農村政策審議会長)

Ken ASH (OECD農業局次長)

山下 一仁 (RIETI上席研究員)

Q&A

15:45-16:00 休憩(コーヒーブレイク)

16:00-18:15 第2部 農政改革の具体的な仕組みと論点

16:00-16:30 リードオフ

山下 一仁 (RIETI上席研究員)

16:30-18:15 パネルディスカッション

司会:紙谷 貢 (食料・農業政策研究センター理事長)

パネリスト

大泉 一貫 (宮城大学事業構想学部長・教授)

金子 弘道 (鳥取環境大学教授)

立花 宏 (日本経済団体連合会常務理事)

馬場 利彦 (全国農業協同組合中央会基本農政対策室長)

山下 一仁 (RIETI上席研究員)

Q&A

18:15-18:30 閉会挨拶

岡松 壯三郎 (RIETI理事長)

18:30-20:00 交流会

*上記プログラムの講演内容及び講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。

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