政策シンポジウム他

日本の財政改革:国のかたちをどうかえるか

イベント概要

  • 日時:2004年3月11日(木)・12日(金)
  • 会場:国際連合大学(東京都渋谷区)
  • 開催言語:日本語
  • 第6セッション:中央と地方の財政関係をどう改革するか

    第6セッションでは、土居丈朗コンサルティングフェローによって、「国と地方:政府間財政関係の再設計」が報告された。現在の三位一体改革の難点について言及し、地方分権を進めるためには、税源移譲で十分ではなく課税自主権の実質的な移譲が必要であることを述べた。さらに、地方債制度の改革の方向性と自治体の破産法制のあり方を示した。

    喜多見富太郎コンサルティングフェローからは、「地方財政の再設計―地方ガバナンス改革からの視点」が報告された。コーポレート・ガバナンス論のフレームワークを用いた地方財政問題の分析とこれからの改革の方向性についての報告がなされた。非常時のガバナンスと平常時のガバナンスからなる状態依存型ガバナンスが有効に機能するような改革が提唱された。具体的には、短期的には国家監督型ガバナンスの強化、長期的にはステークホルダー型ガバナンスを目指すべきだとし、その具体的方法として、「暗黙の政府保証」の廃止と地方再生法の制定が提唱された。

    これらの報告に対して、小西砂千夫関西学院大学大学院経済学研究科教授よりコメントがなされた。財政投融資の問題を勉強した際の経験では、本当の核心の問題はどこにも書いていないということがあった。財投システムの核心は資金運用部のALMにあった。地方財政についてもまず一般論として、同じことがあるのではないかとの感想を述べた。土居報告については、自身の地方財政の制度の理解の仕方がかなり違うとの認識を示した。現象面では確かに土居報告に同意できる点はあるが、地方財政計画が地方財政の根幹であり、地方財政計画を作る際に財務省と総務省の間でどのような理屈が積み上げられているかに注目する必要があり、さらにいえば両省の折衝では本来重要でありながら議論されない点は何かを明らかにする必要があるとの認識を示した。喜多見報告については、コーポレート・ガバナンス論を用いることは興味深いが、同じ報告書を作成する研究会に参加したメンバーとして、いくつかの点で結論が出ていないことについて言及した。戦後改革において、内務省が解体され自治体が形成されたが、それが本当に実行可能な改革だったのかという点と、都道府県を国から離れた完全自治体とすることができるのだろうかという点を述べた。土居コンサルティングフェローからのレスポンスでは、この報告は、地方財政計画を中心とする自治省的な世界観からの決別を目指したものであると述べられた。喜多見コンサルティングフェローは、現在の都道府県の事務配分をそのままにしての地方改革は懐疑的との感想を述べた。

    その後のディスカッションでは、国枝助教授から地方自治体は強力な特別利益団体として考えるのがよいのではないかとのコメントがなされた。また、青木所長からは、喜多見報告について、状態依存型ガバナンスにおける内部者と外部者の区別が、たとえば、住民が内部者と外部者の両方の役割を持っているなど分かりづらいため、もう少し整理した方がよいとのコメントがなされた。

    (文責:RIETI研究スタッフ 木村友二)