政策シンポジウム他

日本の財政改革:国のかたちをどうかえるか

イベント概要

  • 日時:2004年3月11日(木)・12日(金)
  • 会場:国際連合大学(東京都渋谷区)
  • 開催言語:日本語
  • 第2セッション:政治・行政システムと財政

    第2セッションの前半では、飯尾潤ファカルティフェローによる「財政過程における日本官僚制の二つの顔」が報告された。「官僚内閣制」ともいえる、官僚主体の政治構造である日本の議院内閣制の特徴を分析するとともに、このシステムのもとで民主制の定着とともに財政規律が失われてきたことが示された。規律を回復するためには超党派的合意によって政治的意思を確立することと、行政システムの権限配分の検討が必要であることが報告された。

    角野然生コンサルティングフェロー・瀧澤弘和研究員からは「予算はなぜ膨張するか、どう抑制するか:官僚のインセンティブの視点から」が報告された。日本の官僚組織の人事制度が財政問題に対してどのような影響を与えているかについての分析が報告された。日本の高度成長期に形成された「仕切り性」と「非流動性」を特徴とする独自の官僚人事制度が現状不適合を起こし、コモン・プール問題を助長しているとした。改革の方向性として、予算業務における評価システムの改革と責任の明確化、人材の流動化等が提案された。

    これらの報告に対して、加藤創太ファカルティフェローによってコメントがなされた。両報告とも一般的な理解に近く、飯尾報告はマクロ的、角野・瀧澤報告はミクロ的な視点であると整理した。これらの報告では、国益、社会的利益、個人的利益の定義や相互関係が整理されていないことと、特殊な地位を与えられている財務官僚のインセンティブについての言及が欲しかったことをコメントした。加藤ファカルティフェローに対するレスポンスでは、両報告者とも、国益の明確な定義そのものが非常に大きな仕事であり、ここでは分析の範囲を超えていると述べた。

    その後のディスカッションでは、本間教授から、大きな政府を作り出してしまう原因として、政府の予算と個々の国民とのリンケージが希薄になっていることが挙げられた。選挙に積極的に参加する人は個別利益に強い関心をもっており、そのようなインセンティブの問題もミクロ的に詰めていく必要があるとの認識が示された。村松コンサルティングフェローからは、角野・瀧澤報告について、中身は我々も知っていることであるが、現役の官僚がこのような報告を書いたことに意味があると評価した上で、政治との関係、自民党との調整過程はどうなっているのかという言及が欲しかったとのコメントがなされた。

    (文責:RIETI研究スタッフ 木村友二)