政策現場にデータ整備を根付かせる

尾沼 広基
研究員(政策エコノミスト)

EBPMの実効力を高めていく上で、質の高いエビデンスを構築していくことが求められる。そのためには、いかに有用なデータを蓄積していくかが大きなカギとなる。しかしながら、現在の政策形成の現場では、既存の有用なデータたちが存在していても散在したまま整備されていないことがあり、政策形成にうまく活用できていない現状がある。

そうした現状は、私がこれまでいくつかの政策形成や政策評価のプロセスに関わる中で実感したことでもある。ここで 1つ事例を挙げると、企業に対する新たな規制基準を設定するにあたり根拠となるデータの妥当性についての相談があった。この案件では、基準の根拠となる数値の算出にアンケート調査の結果が用いられていた。このアンケート調査で集計された企業データを確認したところ、産業界の実態を正しく反映できていない可能性が高いことが確認された(代表性の問題)。そのため、このままこの調査データを用いて基準を設定してしまうと、実態に合わない規制になることが懸念された。そのような中、政策担当者との話し合いの中で、基準値の算出に必要な情報について事業所単位で毎年報告されている公的なデータが存在することが分かった。このデータは数年前まで各自治体が集計して電子管理する義務があったため、各自治体から収集することができた(自治体ごとにデータ管理方法が統一されていないことによる集計作業の手間など今後対処すべきデータ管理上の問題も顕在化した)。そして、可能な限り統計的な問題に対処しながら再度基準値の算出が行われ、より実態に即したデータに基づいて基準の設定がなされた。

今述べたのはあくまで一つの事例に過ぎないが、政策形成のために有用なデータが存在していても、現場ではその有用性が認識されていない場合がある。EBPMの初歩として、既存の有用データの整備体制を確立して利用可能な状態にしていくことは非常に重要である。現在、こうした現状を改善するための取組として、研究者が政策形成の段階から参画して政策効果検証に必要なデータの取得等について提案できる体制づくりが進められている。経済産業政策においては、 RIETIにEBPMセンターが設置されたことで、こうした現状の改善がさらに加速していくことが期待される。

2022年6月9日掲載

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