ここで留意したいのが、イノベーションディストリクトの台頭(注6)である。都市の中でも魅力的な環境を備え、イノベーターのコミュニティのできている拠点でさらに集積が進む。米国西海岸のスタートアップも、最近はシリコンバレーからサンフランシスコ周辺に重点がシフトしている。Airbnb、Uber、Twitterなどの成長企業はシリコンバレーではなくサンフランシスコに本社を置き、Sand Hill Road(シリコンバレーの中心部)で活動する有名VCもサンフランシスコに支社を構えるようになっている(注7)。ボストンのマサチューセッツ工科大学(MIT)の隣にあるケンドールスクエアもその代表例である。Cambridge Innovation Center(CIC)を中心に徒歩で歩ける圏内に4000を超えるスタートアップ、有力VC、Google、Amazon、Facebookなどのオフィスが集積している。ニューヨークはリーマンショック後に産業構造の多様化のためにスタートアップ支援を強化、重層的なネットワークイベント、技術系大学院コーネルテックの誘致などで集積のレベルアップを図り、マンハッタンやブルックリンを中心としたエリアで世界トップクラスのスタートアップ拠点を形成している(注8)。このような動きはロンドン、パリ、ベルリンはじめ各都市で起こっている。
^ Lerner, J. (2009) Boulevard of Broken Dreams: Why Public Efforts to Boost Entrepreneurship and Venture Capital Have Failed and What to Do about It , Princeton University Press.
^ Bruce Katz and Julie Wagner(2014)The Rise of Innovation Districts A New Geography of Innovation in America, Metropolitan policy programs at Brookings
^ The Mercury news, 2016.2.25 "VCs leave Sand Hill Road, seek out new hot spots in Palo Alto, San Francisco"