人口政策は転換するのか――第六次全国人口センサスについて

孟 健軍
元客員研究員

周知のように、中国では、1980年代初期から「一人っ子」ともいわれる計画出産政策が導入された。改革・開放政策実施後の三十数年来、さまざまな経済社会政策が変化してきているにもかかわらず、変わっていない唯一の経済社会政策はこの「計画出産政策」だともいわれている。

総量規制の計画出産政策

第6回全国人口センサス(2010年11月1日零時を対象)の結果が2011年4月28日に発表された。中国では、2010年の総人口は13億3972万人に上り、2000年の第5回全国人口センサスの12億6583万人より約7390万人増加した。人口増加率は、1990年から2000年の年平均1.07%から、2000年から2010年の年平均0.57%にまで低下している。

しかし、この13億3972万人という数字は"想定外"であったため、多くの識者と政策担当者に大きなショックを与えている。すなわち、今回の人口センサス結果は、第11回五カ年計画(2006-2010)の約束的指標である13億6000万人より2028万人少なく、さらに第12回五カ年計画(2011-2015)の基準ベース数字の13億4100万人よりも128万人少なかった。

また、2010年の年齢別構成をみると、0-14歳が16.60%、15-59歳が70.14%、60歳以上が13.26%である。2000年と比べて、60歳以上の人口の割合は2.93%上昇しているのに対して、0-14歳の年少人口の割合は6.29%低下している。このような年少人口が急激に低下していることによって、人口は少なくてよいという過去30数年間に実施してきた既存の総量規制の計画出産政策を検証せざるを得ない状況になっている。

性別選択政策の結果

実際には、「一人っ子」といわれる計画出産政策が北京と上海のようないくつかの特大都市以外のほとんどの地方では、政策のさまざまな試行錯誤の結果として、暗黙の了解の中に「1.5人っ子」の出産政策に落ち着き、実施されてきた。すなわち、「1.5人っ子」政策とは、男の子を重視する儒教伝統を重んじて、初子が女の子の場合、期間(大体4-8年)をおいて2人目を生むことができる。

このような"心理暗示作用"の男女の性別選択政策によって、2010年に中国で生まれた子供の男女比は118.06:100であった。これは一般的な男女比102-107:100より、はるかに男子の比率が高い。実際にはこの118.06という数字も統計局長の記者会見中継での口頭発言であり、現段階では第6回全国人口センサス公報に載っていないため、統計局長の口が滑ったか、なんらかの嫌な暗示だというさまざまな推測を引き起こし、識者の中には相当不満を抱いている者もいる。

農村でもすでに妊娠の胎児検査を一般的に行っており、子供の性別選択がより簡単になったため、男女比が118.06:100よりはるかに高いのではないかと推測される。週刊誌『瞭望新聞週刊』2011年第19期によると、湖北の監利県では最近5年間の第一子新生児の男女比は150.66:100であり、第二子新生児の場合になると、その差がさらに大きく369:100に達する。このような現象は大都市以外のあらゆる地域、とりわけ農村地域では多く存在している。

それにしても、中国で過去10年間に生まれた子供の数は激減しており、2010年のTRF(総合出生率)は1.63であったといわれている。

人口政策の調整は可能か

一方で、高齢化もかなり進行している。第6回全国人口センサスの65歳以上の高齢者はすでに全人口の8.87%を占め、1億1883万人となった。財力のある大都市と東部地域では医療と年金などの社会保障制度の整備が急ピッチに進んでいる反面、経済発展の遅れている中西部地域、とりわけ農村地域では、いまだに手が届かない状況にある。もう一方で、経済発展に伴い、労働力のポピュレーションボーナスはもう少し続いていくが、これまで大きく寄与してきた15-59歳の生産年齢人口の割合はこれから次第に減少していく。

中国では、自身の貧困問題解決、そして経済発展のために、計画出産を中心とする人口政策によって膨大な人口の総量を規制してきた。しかし、さらなる経済成長を遂げてきている今日、果たして人口の総量規制というこれまでの人口政策の意味がどこにあるのか。むしろ中国における人口政策は、人口総量の規制から人口構成の調整へと、その転換が強く求められる時期になっているといえよう。第6回全国人口センサスの発表後のこの数週間、さまざまなところで識者と政策担当者の間で検証が始められている。

2011年6月14日

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2011年6月14日掲載