農業・食料問題を考える

日本農業の動向

山下 一仁 上席研究員

1.2005年農林業センサスの概要

昨年暮れに農林水産省は2005年農林業センサスの概要を公表しました。農林業センサスは1950年から5年ごとに農家、農業者、経営面積、農業集落森林面積など農林業の構造について調査しているものです。

この結果を要約すると、農家戸数や農業者数の減少、著しい高齢化の進行、耕作放棄面積の拡大、集落機能の弱体化など日本農業の衰退傾向に歯止めがかかる様子がないということです。

5年前の2000年農林業センサスと比べると次のような傾向が見られます。総農家戸数は、284万戸で9%減少しています。このうち、50万円以上農産物を販売している販売農家といわれる農家は、195万戸で16.4%減少しているのに対して、それ以外の自分の家庭用にだけ栽培している自給的農家といわれる農家は、88万戸で13%増加しました。総農家戸数が減少している中で自給的農家が増加していることは、販売農家から自給的農家に移っていった農家が多いことを示しています。業としての農業をやめて自分の食べる量だけ生産している農家が総農家の3割を占めるようになっているのです。

農業就業人口は、2000年の389万人から55万人、14.2%減少して334万人となりました。このうち、65歳以上の高齢者は194万人で58%の割合となっています。農業の担い手は急速に減少かつ高齢化しているということです。

農地面積は470万ヘクタールほどありますが、農業が衰退するなかで、耕作されないで放棄されてしまっている農地も拡大しています。1985年に13万ヘクタールだったものが、1995年24万ヘクタール、2000年34万ヘクタール、2005年38万ヘクタールと、調査を行なう度に増加しています。棚田やため池がある集落でも、半分以上の集落は管理や保全を行なっていません。

2.農業の明るい部分は?

もちろんマイナスの要素ばかりではありません。
農業関係の法人組織は2万1000から1万9000へ9%減少しましたが、これまで農業への参入が認められなかった一般の株式会社の参入が認められたこともあって、会社組織の法人は1万1000で13%増加しました。

農家のうち、農業以外の所得の比重の高い第2種兼業農家は前回調査の9.5%を上回る22.9%の減少になりましたが、農業だけで生計を立てている専業農家は前回調査の0.3%の減少から3.6%の増加に転じています。この結果、総農家戸数に占める専業農家の割合は、18.2%から22.6%に増加しました。

農産物の販売金額でも、3000万円未満の農家は減少していますが、3000万円以上の農家は増加しています。3000万円以上の販売額を挙げている農家は3万戸、そのうち1億円以上の販売農家は2500戸あります。農業全体が衰退する中にあっても、農家らしい元気のある農家が増えているということです。

農家の平均耕作規模は1ヘクタール程度ですが、5ヘクタール以上の農家は増加し、8万7千戸、4.4%の割合となっています。これは農地を借り入れて規模を拡大しているのですが、借り入れ面積は69万ヘクタールで11%の増加となっています。

3.それでは放って置いても農業の規模拡大・コストダウンが進むのですか? 高齢化が進むことは若い農家が農地を引き取ることになるのではないですか?

もちろん、そういうことにはなりません。
高齢化農家はいずれリタイヤするので若い農家が規模拡大できそうなのですが、問題はそれほど単純ではありません。全ての農家がそうだというわけではありませんが、農家の場合、工場や役場に勤めていた世帯員が、定年を迎えると実家で農業を開始するからです。つまり80歳の人が辞めて60歳の人が跡を継ぐので、若い農家に農地が回らないという問題があります。

また、規模を拡大している農家がある半面、農家による耕作放棄が拡大していることに注意が必要です。これは近年、米の値段、米価が下がったので、コストの高い農家が農地を管理できなくなっているのです。農業収益が良いと専業農家がこれを引き取ることができ、規模拡大・コストダウンがさらに進むと、農業収益もさらに向上してさらなる規模拡大が進むという好循環が生まれるのですが、農産物価格が下がっている状況では、専業農家もはじめの一歩が踏み出せなくなっているのです。その結果、農地が出されてきても、引き取り手が出てこないので、耕作放棄されたままになってしまうのです。

4.解決策はないのですか?

規模を拡大しようとする農家や若い新規就農者に政府が助成することで、これら農家の地代を払える能力を高めていけば、農地の移動を促進することができます。これで規模拡大の最初の一歩をあと押しできるのです。また、農業の後継者を300万戸未満となった農家の子弟だけに限るのは、農業の未来にとっても望ましくありません。株式会社の参入もようやく認められたのですが、農家以外の出身の人の中から農業に生きがいを感じる人を幅広く発掘することが、農業の衰退に歯止めをかける道だと思います。

2006年3月31日

2006年3月31日掲載

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