検証:日本の通商政策

「日本のいちばん長い日」という映画があった。終戦の日を描いたものだったが、その日役所から書類を焼く黒煙が幾重も立ち上っていた場面が印象に残っている。あの戦争自体、戦訓に学ぶことにおいて日米間に大きな格差があったことが敗因のひとつだったと聞いている。そして、あの黒煙の中にいかに多くの後世への教訓が秘められていたか、今は知る由もない。

今日の日本でも、行政官は過去の多くを語らないのがよしとされている。経済産業省では数年前の資料が散逸してしまうことすら少なくない。しかし、経験の蓄積が新しい知恵を生み出す重要な土壌だとすれば、過去の政策を検証し、現在の位置を確認する作業が軽視されてはならない。まして一度政府の禄を食んだものは、国民のコスト負担によって得られたその見聞を、むしろ積極的に還元するように努めるべきであろう。

ここではその努力の一環として、日米貿易摩擦が最も激しかった1980年代から1990年代を中心に、通産省の通商政策検証を試みる。