「第6回地域クラスター・セミナー」議事概要

  • 日時 / 場所:
    2003年12月17日(水)18:00-20:30/ 独立行政法人経済産業研究所セミナー室1121
    テーマ:
    「TAMA-技術革新的クラスター形成への取り組み-」
    講師:
    岡崎英人氏((社)TAMA産業活性化協会事務局長)
    児玉俊洋(経済産業研究所上席研究員)モデレータ兼務
    講演概要:
    「産業クラスター計画」の先進事例として位置づけられている首都圏西部の「TAMA(技術先進首都圏地域)」に関して、「製品開発型中小企業」を中心とする集積の特徴およびこの地域が注目された政策的な理由を紹介するとともに、産学官連携推進組織「TAMA協会」が地域の有力プレーヤーを巻き込みながら自立性の高い事業展開を行っている状況について述べ、あわせて、TAMA の産業クラスター形成活動における政府の役割、およびTAMA型のクラスター形成モデルの特徴について議論を行う。
    主催:
    独立行政法人経済産業研究所
    文部科学省科学技術政策研究所
    研究・技術計画学会地域科学技術政策分科会(東京地区)
    出席者数:
    65名(日本側参加者59名、海外アタッシェ6名)

[開会の辞]

斎藤尚樹(文部科学省科学技術政策研究所第3調査研究グループ総括上席研究官)

  • 主催者側から本セミナーの趣旨と第6回目の今回、初めて国内事例を取り上げることの説明がされ、本日の講演者である、岡崎英人TAMA協会事務局長と児玉俊洋経済産業研究所上席研究員の紹介がなされた。

[講演 (18:05~19:10)]

  • 本講演では、「産業クラスター計画」の先進事例として位置づけられているTAMAにおける産業クラスター形成活動について、(社)TAMA産業活性化協会の活動を中心としてプレゼンテーションがされた。
    初めに、TAMA産業活性化協議会(現「(社)TAMA産業活性化協会」、以下では協議会、協会時代を通じて「TAMA協会」という)発足時に関東通商産業局(現:関東経済産業局)の担当部長を務めていた児玉氏から、TAMAが注目された理由およびTAMA協会発足の経緯、並びに、最近の調査結果等について、次に、TAMA協会事務局長を務める岡崎氏から現在のTAMA協会の活動状況について、事例を含めて説明がなされた。TAMA協会の各事業は会員が役割を担いながら自主的に運営されているなど、活動の自立性がポイントとの解説がされた。

[質疑応答 (19:10~20:00)]

モデレータ:児玉俊洋(独立行政法人経済産業研究所上席研究員/地域科学技術分科会東京地区幹事)

Q1:
  • アメリカの場合には、最終目標は雇用である。TAMA地域において、これまでの5年間で創出された雇用と今後5年間で見込まれる雇用数はどの程度か。
  • アメリカでは、売上げにより会費が1000万円前後の例もあり、会費7万円は非常に安いと思えるが、妥当な金額なのか。
A1-1:児玉俊洋独立行政法人経済産業研究所上席研究員(以下、「児玉」)
  • 民間の自立的な活動が必要であると認識し、政府から多額の補助金を出すつもりはなく、会費制で始めたが、最初から大きなリスクをとらず、地道な活動から始めることを考えた。
  • 大学、自治体、個人等の会員がいるが、会費ベースでは企業が主力であり、企業の中では中小企業である。中小企業が抵抗なく参加できるレベルの活動、それにふさわしい負担は5万円か10万円程度と考え、活動の価値、中小企業の負担感を考慮して中間の7万円とした。
  • その目標は連携・交流を進めることであり、出会いの機会を作ることや積極的にコーディネーションすることを含めて連携を進める。連携することで、新製品、新事業を生み出すことにある。その結果、雇用がついて来ると考えている。
  • 勿論、雇用までいくことが理想であるが、1次目標値は雇用ではないため、雇用数をあまり把握していない。会員には日立や富士通といった超大企業が含まれるので、そこまで入れると何万人にもなるが、中小企業のレベルで考えると5000人から1万人の間だと思う。それはTAMA協会の活動の結果、創出されたということではなく、参加している中小企業の雇用創出という意味である。
  • アンケート調査の結果、TAMA協会会員とそうでない企業との雇用パフォーマンスを見ると、TAMA協会会員のほうが良くなっている。TAMA協会の活動の結果そうなったという因果関係はあるとは思うが、まだ特定することはできない。現在の活動成果としては、私の研究の中では連携事例がどれだけできたかということを第1次的な指標と考えている。
A1-2:岡崎英人社団法人首都圏産業活性化協会事務局長(以下、「岡崎事務局長」)
  • 当協会が会員からいただく会費総額は年間約2600万円。中小企業の場合には年7万円、そして資本金100億円以上の大企業の場合は49万円と格差がある。7万円という金額は、中小企業にとってハードルが高いと考える。
  • 会費を比べる相手として商工会議所の会費は高いところでも年1万円弱である。値ごろ感としては高い。しかし、児玉さんの意見にもあったとおり、そこそこ頑張って地域のリーダー役になれるような企業に入っていただくということを念頭においたので、当初は高いという見解を持っていた。
  • 年間の会費約2600万円の使途として、プロパー職員の人件費が約1000万円。それから事務所の運営や会員管理などの運営費が約1000万円。TAMA-TLOのサービスは当協会の会員企業は全て無料で受けられるが、その分の委託料として500万円をTLOに支払う。会費は概ねそれで消える。私の給料は協会からいただいているが、これは色々なコンサルのような活動等による委託料から捻出しており、それが大体3分の1ある。そして国の補助金が3分の1。全部足すと大体8000万円から9000万円の予算規模になっている。
  • 将来の目標は、会費のウエイトは現在約3分の1であるが、国の補助金が下がることを想定し、できる限り国の補助金が無くても自立できるようにしていきたい。そのためには、会員にメリットを感じていただき、現企業会員数の290を5カ年計画が終わった時点では、希望としては500ぐらいにしていきたい。
Q2:
  • ファンドは西武信金が直接投資判断等を行っているのか。
  • 登録されたセールスレップを活用したマーケティングをするということだが、登録するにあたってどのような基準で考えているのか。登録料をどうするのか。商社との関係をどう考えているのか。
  • 大学との効果的な連携のために、制度面等で大学に対する要望はあるか。
A2:岡崎事務局長
  • 通常のファンドの場合、ベンチャーキャピタルが取締役会などを開いて投資案件について検討するが、TAMAファンドの場合、西武信金がほぼ100%のファンドで、5億円だが、投資委員会というものを作っており、そこには、TAMA協会から私、TAMA-TLOは井深社長、西武信金キャピタルから取締役がそのメンバーとなり、まず2つの要素で提案された案件を審査する。
  • 審査の1つ目の要素は、事業の目利き、将来性の有無だが、これはどこのベンチャーキャピタルでもやっている。2つ目の要素はその目利きした事業について支援をしなければできない部分があるが、それをオールTAMAのネットワークを使って支援が可能かどうかである。
  • 一例として、風力発電の提案をした企業があったが、生産体制がとれない。生産にあたり部品の点数を考えると多数ある。それをコスト、納期を考えながら発注するためのネットワークがない。そういう部分について、当協会が会員企業に情報を流せば、手を挙げる企業がたくさんある。そういうことで支援ができる。
  • モノづくりの案件などは、将来性があっても、ハンズオンで支援しないとうまくいかないので、そのハンズオンでできる育成支援がメニュー化できるかどうか、それを併せて審査をして投資を決定している。だから極端な例をいえば、将来性があっても、支援ができないものについては投資をしない場合がある。
  • セールスレップの方々と当協会の会員企業とのマッチング会を実施したことがあり、いくつかうまくいきかけたが、条件面で折り合いが難しかった。アメリカのセールスレップは完全な歩合制だが、日本の場合、固定収入、固定経費を求められ、それ以外に歩合で何%という条件が提示されることが多い。ただし、完全歩合で良いという人もいる。
  • 代金回収の問題もある。アメリカはほとんど現金決済のため、セールスレップは代金回収、ファクタリングサービスを行わないが、日本では手形取引も含め掛け売りが一般的。そのため、代金回収をどのようにやるか個別に交渉する。また、登録するセールスレップに対しては、当協会の会員向けのインセンティブの提供を求めている。すなわち、通常、何%以上何%未満という歩合の設定があるが、その範囲内でできる限り低率の歩合を求める、というようなインセンティブを講じていただく。
  • 現在、企業とセールスレップの橋渡しをする販路開拓コーディネータを考えている。企業は、費用が相当かかるのではと疑心暗鬼な部分があり、セールスレップの活用をためらいがち。そのため、販路開拓コーディネータが企業の販売計画を事前にリサーチし、自分のネットワークで対応できる部分は販売先を紹介し、良いセールスレップがいればそのセールスレップとのエージェント役をやる。このようにして、中小企業が、安心して販売の専門家と繋がるようにしたい。
  • 大学に望むことは、しっかりしたリエゾン機能である。当協会が企業とやりとりする場合、できるものとできないものを仕分けして、相手に速やかに伝える。できないことはできる限り早く伝え、る。できるものは、期限を明示する。全てがそうではないが、大学関係のリエゾンは連絡しても返事がないケースもあるし、あるいは担当者に連絡したからあとは勝手にやってくださいというのもある。当協会は焦点を絞って大学のリエゾンに企業を紹介するので、そういう案件については、できる限りスピーディーに進むような風通しの良いシステムを作っていただきたい。これができれば本当に連携はうまくいくと思う。
Q3:
  • TAMA協会の事業の5本柱の1つに、海外販路の開拓(販路開拓・海外展開支援事業)があるが、具体的な計画があるのか。
A3:岡崎事務局長
  • 全部がそうではないが、今まで、日本の地域と諸外国の地域が交流するという事業があっても、支援機関の支援が終わるとその連携も終わってしまうことが多々見られるが、それでは困る。
  • TAMA協会で来年度以降やっていきたいのは、TAMA協会のような支援機関がある国において、その支援機関と連携をし、まず支援機関同士が親密になる。そして、TAMA協会が会員企業のオファーを相手国の支援機関に繋ぎ、そのオファーに対応していただくようにお願いする。それは逆も同じで、相手国の支援機関から求められたことは、当協会も全力で対応する。そこで、言葉の問題等があるから、きちんとコーディネートできる人の存在が必要である。
  • 具体的に想定している国があるが、その国においてTAMA協会のことをよく理解し、かつ、相手国の言葉が堪能で、かつネットワークを持つ方に、会員の中小企業の要望を伝え、コーディネートしていただき、繋いでいただく。こういう実のある交流をしていきたい。
  • モノを売る時に、日本だけでなく外国で売ることも1つの選択肢である。今、会員企業で開発した製品が日本では飽和状態なのだけど、外国に持っていけば、まだマーケットがある場合が相当あると思われ、そういう意味で販路開拓と海外展開支援を一緒の事業にした。
  • 海外ではさまざまな展示会があるが、日本の展示会と違い、オープンしている中で商談が決まる。そのような会員が望む展示会への出展に対するサポートをしていきたい。
Q4:
  • この5年間で連携が成功した企業と、自然消滅やデスバレーに陥った企業はどの程度あったか。
  • 成功をどのように定義し、どのように評価するのか。一企業だと、証券取引所の上場とかあるいは株価とかそんなもので計ることができるが、連携における成果の評価はどのようにするのか。
  • 競合企業に対して十分に競争できる段階、つまり、成功と呼ぶことができる段階に至るまでに平均してどのくらいの期間がかかるのか。
A4-1:岡崎事務局長
  • 今まで90案件の連携をしたが、実際に売れたものは数件。俗にいうデスバレーに落ちてしまったというのが多かった。
  • 研究開発してできた案件はプロトタイプが多い。機能は出るが、製品化には至らないような大きすぎるものであったり、あるいは高コストであったりする。量産化、製品化に至らすためには、顧客が求めるサイズにし、そしてコストもコンペティタよりも当然安くするための追加研究というのは当然必要であるが、その部分は経済産業省の補助金の対象にはならない。対象となるのは事業化一歩手前の研究開発費までである。その部分を何とか金融機関とアライアンスしないと難しい。勝負をかけている企業の場合、それが駄目だとぽしゃってしまうので、そこに何とかお金が回るようにしなければならない。
  • そういう場合の成功事例はどうするかといえば、当然、そのものに対する研究開発費など、全てもろもろが、売れて、回収できて、もう少しいえば、そこから利益が出て、将来の食いぶちになる、というのが実現できれば成功と見て良いと思う。それは過去5年間でやってきた中で、デスバレー一歩手前、まだ落ちてないと、谷間でデスバレーに木が生えていてそれに引っかかってくるのがある。そういうのを引っ張り上げて何とかそれを事業化に至らしたいということである。
  • 十分に競争できる段階に至るまでの期間は、場合によっては、お金が回れば1年とか2年でも可能だと思う。
A4-2:児玉
  • 私のプレゼン資料のスライド41の上から2番目に紹介しているのは、昨年連携事例を調査したもので、TAMA協会の活動の成果事例として、製品テーマの数で20件の事例を見ている。これは昨年の3月段階で把握できて、かつ調査に協力してオープンにしてよいというものに限られているので、実際のTAMA協会の活動成果としての連携事例はもっと多いが、この時点で少なくとも20件の連携事例があったということである。そのうち、その段階で事業化されていたものは6件であった。90分の数件より打率は良いと思う。90というのは、私自身子細に見ていないが、あまりTAMA協会が深入りしていないものも含んでいると思う。
Q5:
  • TAMA協会がカバーしているエリアは非常に広く、その中に多くの大学や自治体など、TAMA協会と同様の支援活動をしている機関があるが、それらの活動とTAMA協会の活動とはどのように調整しているのか。
A5-1:岡崎事務局長
  • 他の団体のセミナーやイベントでは来るものは拒まずの方針で、実施後の成果よりも、これは極論だが、参加人数が多ければそれで良しとなっているケースが少なくないように感じる。大学の研究者の発表会等からも当協会に参加依頼があるが、やはり数集めで終わっている印象を持つ。
  • 当協会では、過去5年間で延べ1000回ぐらい企業訪問しているため、企業の経営課題をきちんと時系列的に捉えている。企業にいろいろ働きかけ、ぜひやりたいと手を挙げた企業にだけ参加をしていただく。セミナーを実施する場合、企業訪問により、会員からこういう分野のセミナーをやってもらいたいという意見を収斂し、特化した内容により専門家を探して実施している。
  • 当協会は伸びそうな中小企業をウォッチングし、不足している経営課題の部分について集中支援をしている。エリア内にある大学や自治体はそのように密接に絡むことはほとんどできない。エリア内の自治体の一部は、当協会のような活動は難しいと認識しているから、有望と思われる企業を見つけた場合に、当協会の会員になるように紹介していただいている。
  • 自治体およびその外郭団体は自分のエリア内の企業に公平、公正性を求めてしまいがちである。企業を支援し、あるところまで来るとこれ以上はできませんとなってしまうと企業側の言い分としては、はしごをはずされたとなってしまう。
  • 当協会に職員を派遣する自治体の場合、市長の公約が産業振興であり、産業振興のためには、地域でできることと広域でできることがあることを認識している。地域でできることは自治体が頑張り、たとえばテリトリーにない大学の先生を紹介するとか、あるいは連携可能な企業をネットワークで探すなど、広域でなければできないことはTAMA協会が担う。役割分担により、その地域の全体も良くなるし、部分も良くなるということで活性化がなされると思う。
A5-2:児玉
  • 別の整理をすると、この地域はTAMAという広域の括りで連携を推進している機関がTAMA協会だということ。そして、この地域内の個別の支援機関、たとえば相模原市産業振興財団とは補完関係にある。また、各大学がTAMA協会のメンバーであり補完関係にある。補完関係の意味は、1つは地域的なカバレッジの違い。もう1つはTAMA協会のターゲットは製品開発型中小企業、および、加工型であっても力があり各地点の中核を担っているような企業である。これに対して、たとえば東京都の中小企業振興センターの会員は非常に数が多く、加工型の中小企業が大変多いため、当然サービスや機能について補完関係がでてくると思う。
  • 地域振興機関や中小企業振興機関、地域によってはテクノポリス機関があったりして、同じ地域で比較的類似の目的を持ちやすい機関が重複して存在する場合がある。一方、TAMAの地域では、TAMAという広域の地域で開発的な主体をターゲットとして活動するという意味では、TAMA協会は初めての取り組みである。支援機関が重複して存在するTAMA以外の地域に関していえば、各機関のベクトルをあわせることが大切になると考える。
Q6:
  • 企業は経営者が経営方針を示して、スケジュールに沿って実現していくものである。このようにさまざまな形で支援することは、経営の本質とは違うのではないか。皆さん企業のために色々取り組まれているが、限界を感じることはあるか。
  • 金融面の支援をしているとのことだが、当然だが、経営者は金を借りたら、返済しなければならない。金を借りるということは大変なことである。事務局の方はそういう本質を分かっているのか。
A6-1:児玉
  • 地域の活性化や産業の活性化の観点から、個別企業の経営判断を補完してこういう風にしてもらいたいというものはあると思う。勿論、強制的に、また、リスクを高めてまでこうしてほしいというわけではない。たとえば、異なる技術を持ち寄って製品を作ることで、色々なマーケットに対応することができるというのは、理念としては正しいと思うが、実際にそういった方向で動くかどうかは、個々の経営者にかかっている。その個別の経営判断は、各経営者、企業が行うが、そこに至る場づくりについて、政府や自治体、あるいはTAMA協会のような機関の役割があると思う。こういうイニシアチブを始めなければ、連携・交流がこれだけ活発にはならなかったと思う。産学連携の道筋をつけるために、色々な活動が必要であり、まして企業間連携のためには、もっと相互の信頼感を醸成するため、色々な場づくりが必要になる。そういう意味で、経営者の判断を支援する、そのための環境を作り、日本経済全体の発展に資するような企業活動をしてもらいたい。
A6-2:岡崎事務局長
  • クラスター自体のPRにはかなり神経を使っている。メディアを通して、クラスターの求心力を高めるためにも企業として本計画に参加することに実際にメリットがある点を強調したい。
  • 金融面の支援活動としては、地域金融機関の方に企業を回っていただいて、従来の担保主義によらない、たとえば技術評価するとか事業評価するとか、そういうことを地域の金融機関の営業担当課長に私どもが研修をしている。某金融機関では、4週間、その間いっさい金融業務をやらずに、営業課長に研修を受けさせた。そういうことを通じながら、私たちも接しているので、融資というのは大変であることは我々も理解しているつもりである。また、潰れた会社等をいくつか見ており、その厳しさを実感している。
  • 融資にリスクは伴うが、今、金融機関でも金融検査マニュアルをもう少し緩和してそれを金融機関ナイズして、何とか中小企業さんにお金が回るようにしたいという考えになっている。そこは協会が主役になれない部分であるが、金融機関が企業をきちんと評価できないということであれば、協会に依頼していただき、技術評価とか事業評価等を協会で行い、それを金融機関が融資を実行する際の1つの判断材料にしていただく。
Q7:
  • 2つのTAMAがありそうだと理解したが、1つはTechnology Advanced Metropolitan Areaという意味での、多様な技術の集積のある地域的な概念、そしてもう1つは、TAMA協会という、一地域に限定され、あるいは特定の地方自治体と強く関連性を持って展開されている、ある意味囲い込み型の試みであるが、この両者の関係はどうなっているのか。
  • 地域活性化の方向性として、その有効性が問われていくと思うが、TAMA協会、そして、自治体など他の機関の取り組みについて、相互にパフォーマンスを評価して、その結果進化的なプロセスを経て、全体的に地域活性化の仕方が高度化していくと考えるが、見方をお聞きしたい。
A7:児玉
  • TAMA協会の活動は広域のTAMAという地域の全てに注目しているわけではない。その中で、新製品の開発とか新規事業の創出とか、新規創業とか、日本経済の活性化に繋がるような動き、同時に地域の企業や大学にとっても利益になるような動きを推進する、そこに注目しているのがTAMA協会の活動であるので、地域の色々なレベルの活動があるが、その全てではない。ターゲットは絞り込むが、広域的に行うのがTAMA協会の活動である。
  • 地域経済の活性化の手法として、TAMAのやり方は1つのモデルだと考える。経済産業省の産業クラスター計画もTAMAだけをモデルにしているわけではなくて、札幌、近畿のバイオ、神戸の例などを認識しながら産業クラスター計画ができているわけで、TAMAのやり方が全ての地域に適用できるものではないが、そこから汲み取れるものはあると思う。
  • ご指摘のとおり、進化的な手法の発展というのはあると思う。先程の私自身分のプレゼンテーションで、製品開発型中小企業の存在を強調したが、企業側の担い手というのは是非とも必要なわけで、支援機関がいくら頑張っても担い手がいなくてはいけない。大学、研究機関も必要である。そして大学がいくら頑張っても、その研究成果を製品化するのは企業であり、先程のご質問と関連するが企業の経営判断である。経営判断をして、製品化する企業がその地域に存在することが、クラスター形成活動の絶対必要条件だと思う。その目の付けどころとして、自社製品を持つ製品開発型中小企業に着目するのは1つの方法だと思う。
  • 地域によってはそのような企業が少ない場合もあるが、今比較的期待できるのは、スピンオフである。TAMAの製品開発型中小企業は、70年代、80年代に大企業、あるいは中堅的、ある分野で中核的な中小企業からスピンオフした技術者が起源になっていることが多い。最近、大企業の終身雇用慣行が薄れてきているので、大企業とか中核的な企業の人材が流動化する。本人の選択として、そういう選択肢が広がっていると思うので、スピンオフが出てくる可能性が多いと思う。そういう人たちを地域に定着させることは可能だと思う。
  • TAMA協会は、連携、仲介に関して、この地域の親玉的な存在だが、それを構成する会員や、そこから発展しているミニTAMA会などのイベント事業など、色々な活動が、またそれぞれの仲介機能を持っている。それも1つの手法である。
Q8:
  • 各省の補助金の中には、利用しにくいものがあると推測するが、それに関する要望を教えていただきたい。
A8:岡崎事務局長
  • 補助金の趣旨は、将来売れる製品の研究開発を助成することであるから、成果を求めるような補助金にすべきである。全部がそうではないが、また、当協会ではそういうことはやってないが、補助金の交付を受けやすくするために、補助金のスキームに事業の内容を合わせてしまうことがある。
  • 補助金の申請手続き、実績報告等の提出書類を簡略化していただきたい。成果は出さなくてはいけない、形式的な手間のかかる書類も必要となると負担が大きい。成果が出たら、補助金を交付しますよという案件をいくつか作っても良いのでは。
Q9:
  • 産学連携では知的所有権が重要である。今後の知的所有権の活用について、どのように考えているか。
A9:児玉
  • 知的所有権を活用するということがTAMA協会の活動の中で大きく位置づけられていて、TAMA-TLOが2000年に設立されている。それはTAMA地域の約20大学の研究成果の地域企業への活用を図ることを目的としている。
  • TAMA-TLO社長の井深さんによると、大学の出来上がった特許、研究成果を企業に移転するのはあまり簡単なことではない。それよりは大学と企業が共同研究、共同製品開発をすることが効果的である。その前提として大学の研究者が持つもともとの知見をベースとして共同研究をすることで新たな特許および製品を作ることが効果的ということが、TAMA-TLOの活動経験から明らかになりつつある。

[閉会の辞]

斎藤尚樹

  • 次回のセミナーは、海外事例としてドイツを取り上げ、2004年1月26日に開催予定。イノベーション政策、ネットワーククラスター形成のための取り組み等、ドイツの具体的な事例紹介を予定している。

この議事概要は主催者の責任で編集したものである。
なお、質疑応答参加者で要修正箇所を発見した方は、主催者までご連絡願いたい。