AMU and AMU Deviation Indicators

アジア通貨単位ワイド(AMU-wide)とAMU-wide乖離指標

アジア通貨単位ワイド(AMU-wide)のデータ新設の目的

RIETIと一橋大学COEの共同プロジェクトとして2005年9月より開始されたアジア通貨単位(AMU)およびAMU乖離指標の作成、およびデータ公表は今年で4年目を迎える。AMUは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の10カ国、および日本、中国、韓国の合計13カ国の通貨で構成される共通通貨バスケットであり、AMU乖離指標を東アジアにおける為替相場政策協調の一環として用いることを提案している。

AMU-wideは、アジア経済と深く関わりを持つ3カ国(オーストラリア、ニュージーランド、およびインド)を加えた16カ国で構成されるアジア通貨単位である。AMU-wideは、アジア経済と深く関わりを持つ3カ国(オーストラリア、ニュージーランド、およびインド)を加えた16カ国で構成されるアジア通貨単位である。東アジアを中心としてより広範囲にわたった経済を対象とした共通通貨バスケットであり、AMUと合わせて域内経済のサーベイランス指標として活用されることが期待される。

AMU-wide およびのAMU-wide乖離指標の計算は、AMUおよびAMU乖離指標の計算手法にすべて基づいて行われている。ベンチマーク期間は、加盟各国の域内貿易収支の合計、および加盟各国の対日貿易収支の合計が均衡状態に最も近い期間として決められる。

表1:ASEAN10+3 (日本、韓国、中国*)+3 (オーストラリア、ニュージーランド、インド)の貿易収支
表1:ASEAN10+3 (日本、韓国、中国)+3 (オーストラリア、ニュージーランド、インド)の貿易収支
注:すべての数値は筆者の計算による。貿易データはDOTS (IMF)に基づいている。
* 中国に関するデータは DOTSの "China,P.R.: Mainland" と "China,P.R.:Hong Kong"の両方を合わせて用いている。
** 対日本の貿易収支は、日本を除くアジア・オセアニア15カ国の対日貿易収支の総額である。

表1は、1990年から2021年までのアジア、およびオセアニア16カ国の貿易収支を示したものである。これによると、域内の貿易収支の数値が最も小さいのが1999年、2番目に小さいのが2000年であったことがわかる。また、この期間の加盟各国の対日貿易収支の値もさほど大きくない。そこで、AMU-wideのベンチマーク期間を1999年・2000年の2年間とし、この期間の平均為替レートをベンチマーク・為替レートとして採用する。

AMU-wide のバスケットウェイトは、直近3年間の域内貿易量シェアと購買力平価で測ったGDPに基づいたウェイトの算術平均として計算される。現在採用しているデータは、2019年から2021年までの3年間である。以下の表2は、各通貨の貿易量シェア、購買力平価で測ったGDPシェア、およびその算術平均によるシェア、ベンチマーク為替レートとAMUのウェイトをまとめたものである。

表2:アジアおよびオセアニア通貨のAMU-wideシェアとAMU-wideウェイト
表2:アジアおよびオセアニア通貨のAMU-wideシェアとAMU-wideウェイト
* : 貿易額はDOTS(IMF)における2019年、2020年、2021年のドル換算合計額の平均値。
**: 購買力平価で測ったGDPは、世界銀行の「World Development Report」における2019年、2020年、2021年の平均値。
*** : ベンチマーク為替レート(米ドル・ユーロ/通貨)は、2000年と2001年における米ドル・ユーロに対する日次為替レートの平均値。
****: AMU-wideのシェアおよびウェイトは2023年10月に更新された。

表2のAMUウェイトを用いて以下のようにAMUの対米ドル—ユーロ為替レートを算出することができる1

現在のところ、AMU-wide乖離指標のデータ公表は名目値のみである。

  1. AUS$=オーストラリアドル、BN$=ブルネイドル、CBR=カンボジアリエル、CNY=中国人民元、IDR=インドネシアルピア、IND=インドルピー、JPY=日本円、KRW=韓国ウォン、LOK=ラオスキープ、MLR=マレーシアリンギット、MYK=ミャンマーチャット、NZ$=ニュージーランドドル、PLP=フィリピンペソ、SP$=シンガポールドル、TLB=タイバーツ、VTD=ベトナムドン