RIETIのウェブサイト内にある関氏のコーナー、「中国経済新論」を訪れると、その更新頻度と情報量の多さに驚かされます。日中関係を中心とした時論を展開する「実事求是」というコラム欄は週1回更新され、中国研究者による分析や提言も積極的に紹介されています。「実事求是」とは、事実に即して事物の真相を探求するという意味で、トウ小平氏の改革開放を象徴するキーワードの1つだそうです。関氏のコーナーもまた、この方針のように、しっかりしたデータや経験、分析に裏づけられた議論を積み重ねてきています。
本書は、そうした充実したサイトの内容を凝縮して作られているので、読者の方は十分満足できる読み応えを得られると思います。また、各項の話はそれぞれ独立しているので、どこから読み始めてもかまいません。読みやすさという点でも評価は高いのではないかと思います。本書のなかで関氏は、日本の「中国」論は、「感情論が目立っており、冷静な分析が欠けている」と指摘しています。日本と中国、両国間の相互理解を深めるために中国を「正しく」理解したいと思っている人には、特にお勧めの本です。
(東洋経済新報社 佐藤朋保)