インターネットの出現により、社会はモノの生産が主体の社会から、情報社会へと一挙に進んできています。IT革命という喧噪は過ぎ去りました。しかし、ITを大きなトレンドとして時代が変わりつつあるのは事実でしょう。今は第二段階を迎え、音声や動画を送れるブロードバンド時代へと突入しています。インターネットは国民の誰もが広く利用でき、通信は伝送手段を超え、産業構造を変えるエンジンになりつつあります。なかでも通信・放送の融合という「水平分離」の話題は、業界関係者のみならず常に論争を巻き起こしています。このような変革期において、社会の中でよりよく技術を活かしていく制度を設計していくにはどうすればよいでしょうか。
本書は、マイクロソフト訴訟で著名なローレンス・レッシグ氏をはじめ、日米を代表する情報通信の研究者8人が、ブロードバンド時代にふさわしい規制政策のあり方を書き下ろした論文集です。いま問題となっているような論争は、すでに30年前の米国で起こっていた話でもありました。本書ではインターネットのガバナンスや電波政策、ユニバーサル・サービスとデジタル・デバイド、IPv6などさまざまな話題を紹介し、経済的・法制度的分析を中心に、ブロードバンド時代にふさわしい規制改革のあり方とはどうあるべきかを考えます。
(東洋経済新報社 佐藤敬)