RIETI経済政策レビュー4

『モジュール化――新しい産業アーキテクチャの本質』

本書は、モジュール化とは何かを論じた論文に始まり、コンピュータ産業、ベンチャー・エコノミー、ゲーム産業、自動車産業、半導体産業に至るまで、幅広い分野を分析の対象としています。モジュール化は、こうした幅広い分野を貫いて見渡すことができる、非常に刺激的な概念です。モジュール化とは、「字面では、『モジュール(部分)に分割し、分業すること』ということですが、これにとどまらない深い内容がこめられています」(はじめに)。

日本の産業競争力の強さが失われている、という議論がありますが、モジュール化というフィルターを通して見ることで、各産業が(競争力の有無も含めて)どういう状況に置かれていて、なぜそうなっているのか、その本質的な部分が見えてくるようです。そして編著者の安藤氏が指摘するように、そこを見極めることなく、むやみやたらと「対策」に走っても、「画竜点睛を欠き、上っ面だけの無駄な努力」に陥る危険大だといえます。 将来、モジュール化に関する古典的名著になるであろうと言われるDesign Rule(K・ボールドウィン/K・クラーク著)を開くと、組織構造や契約構造、それに市場の役割までが議論の射程に入っています。複雑なシステムを分析するツールとして、またビジネスへのヒントとして有益な「モジュール化」に関する議論を収めた本書は、学者、研究者、ビジネスマンなど、幅広い方にお勧めできる1冊です。

(東洋経済新報社 佐藤朋保)