RIETI経済政策レビュー3

『医療改革――痛みを感じない制度設計を』

日本の医療が抱えるさまざまな問題が多くの人の目に明らかとなってきています。実際、医療制度改革の必要性は声高に唱えられていますが、改革の道筋をどうつければいいのか。本書では「国民の負担増は不可欠だが、その負担増を国民が納得してくれるように、医療サービスの質を上げていかなくてはいけない」という立場から、さまざまな分析・提言を行っています。

具体的には、医療の財源確保という点では、タバコ新税や、シンガポールのMSA(医療貯蓄口座)制度の導入を提言しています。また負担増に見合うシステムづくりという点からは、まず医療の効率化を図ることを提言し、さらに医療法の見直し、e-HealthとDRGの可能性、医療・介護事故対策に触れています。

制度改革を論じる場合、豊富なデータを用いた実証的な研究は避けて通れません。その点、本書の主張は、医療の効率性を判断する際に指標となるような多くのデータに裏づけられており、説得力を持っています。また、経済の論理という基準から、今の医療の問題点を個別に指摘している点で、これまでとは違った、新しい見方を提示してくれると思います。

(東洋経済新報社 佐藤朋保)