RIETI経済政策分析シリーズ4

『転換期のWTO――非貿易的関心事項の分析』

「転換期のWTO」といったとき、どういった意味でWTOが転換期にあるのか、即答できる方はそれほど多くはないのではないでしょうか。残念ながら、日本では、WTOに対する一般的な関心がそれほど高くないようです。しかし、日本はGATT/WTO体制から多大な恩恵を受けてきた国であり、「WTOの将来の在り方は、われわれが真剣に考えなければならない問題」だといえるでしょう。

GATT/WTO体制は従来、貿易の規制という役割を担ってきました。しかし最近では、WTOは環境や競争政策、労働基準、さらには人権や文化などの「非貿易的関心事項」までを取り上げるべきとする主張が、強くなっています。従来どおり貿易機関にとどまるのか、あるいはその枠を越えて経済機関に脱皮するのか、WTOは今、岐路に立たされています。この問題について、法学、政治学、経済学それぞれの立場から考え、議論した成果を収めたのが本書です。

国内外の学者の間では、WTO体制の議論はホット・イシューであるようです。各分野の研究者がどのような観点からWTO体制に関心を抱くのか、本書ではその思考プロセスに触れることができます。本書から、この問題と向きあう際のきっかけがつかめると思います。

(東洋経済新報社 佐藤朋保)