国際政治では長らく主権国家がほぼ排他的なまでに外交のプレイヤーとして君臨してきました。しかし冷戦を経た現在は、非政府組織(NGO)が新たな主体として認識されてきています。NGOはさまざまな分野で私たちの身の回りでも活躍しています。また、彼らの中には国境を超え、グローバルに活動を展開しているものもあります。その支持基盤である各国内のシビルソサエティ(市民社会)は国境を超えて連携し、トランスナショナル・シビルソサエティ(TCS)を作っています。
彼らの連携は、グローバルな規範の形成に影響を与えつつあります。1990年代に相次いで誕生した、気候変動枠組み条約、対人地雷全面禁止条約、国際刑事裁判所設立規程といった人道・環境分野の多国間条約が成立するまでのTCSの活躍は目覚ましいものがありました。筆者の目加田説子氏はその1つである地雷廃絶日本キャンペーンの運営委員としてNGO活動に携わり、国際会議などに参加した現場体験と多くの関係者へのインタビューなど一次情報に接する機会を通して、本書を書き上げられました。そういった意味では日本における国際関係についての新しい試みの専門書といえます。
21世紀は国境を超えて、これから直面する地球規模の問題に、私たち一人一人の市民が手を結び、解決に立ち向かっていく時代になるのではないか、そんな予感をいだかせてくれさえする一冊です。
(東洋経済新報社 佐藤敬)