著者からひとこと

中小企業金融の経済学―金融機関の役割 政府の役割

著者による紹介文

中小企業は、日本の企業の中でも企業数で99%超、雇用の約7割、付加価値で約5割を占める存在であり、そのパフォーマンスが日本経済の動向に大きな影響を及ぼします。今回のコロナ禍では、中小企業の存続を助ける手段としての金融の重要性が改めて明らかになりました。信用保証付きの民間融資や政府系金融機関融資が50兆円以上提供され、企業倒産は歴史的な低水準です。一方でこうした金融支援措置は、金融機関の支援がなければ事業の継続が難しいいわゆる「ゾンビ企業」によって多く使われているのではないかとの指摘もあります。

振り返ってみると、中小企業金融を取り巻く状況はこの30年間で大きく変化しています。支援がなければ事業継続が困難なゾンビ企業の存在はもとより、度重なる金融危機、企業部門の貯蓄超過、地域金融機関による越境貸出、民間と政府系金融機関との競合、メガバンクをはじめとする金融機関合併など数多くの事象が、人口減少が進みフィンテックの台頭が指摘される日本の経済社会で生じました。本書は、これらが中小企業への資金配分やその効率性にもたらした影響についてエビデンスを示しつつ、ポストコロナの時代における対応の方策、金融機関の役割、政府の役割について論じています。

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植杉 威一郎