著者からひとこと

生産性 誤解と真実

生産性 誤解と真実

生産性 誤解と真実

  • 著:森川 正之

著者による紹介文

本書は、「生産性」をキーワードにした日本経済論です。近年、政府の成長戦略では生産性向上が大きな柱になっていますが、深刻化する労働力不足を背景に、企業、経済界、労働組合でも生産性向上への関心が高まっています。しかし、生産性という概念についての誤解や、根拠の乏しい俗説も多いのが実情です。

「企業の稼ぐ力を高めることが生産性向上である」、「激しい競争の下で高い価格設定ができないので日本の生産性は低い」、「サービスはタダという消費者の意識がサービス産業の生産性向上を妨げている」といった議論はその例です。労働時間の削減などの働き方改革、企業統治ルール、地方創生のための施策などについても、エビデンスに欠けた政策論議が散見されます。

本書は、生産性に関する正しい理解を実務者にもわかりやすく伝えるとともに、生産性向上のために何が必要なのか、何をすべきでないのかを鳥瞰することを目的としています。具体的には、イノベーション、教育・人的資本投資、働き方改革、経営の質、規制改革、グローバル化、都市・地域経済、財政・社会保障といった様々な角度から、生産性向上に有効な政策、効果のない政策、弊害の大きい政策などを整理しています。生産性に関連する内外の研究成果、筆者自身が行ってきた実証分析、企業や個人に対する調査から得られた観察事実など様々なエビデンスを基礎に記述していることが特長です。

生産性を高める余地が随所にあることは間違いありません。ただし、実行しやすい政策は既に行われてきているので、生産性上昇以外の政策目標とのトレードオフを孕む政治的に困難な領域に踏み込まない限り、生産性上昇率を「加速」することは難しいのが現実です。日本経済の実力を過大評価せず、控えめな前提に立った経済運営を行うことが望ましいというのが本書のメッセージの一つです。 本書が、経済政策の企画・立案や企業経営の実務に携わる方々に役立つことを願っております。

2018年11月
森川正之

著者(編著者)紹介