著者からひとこと

新々貿易理論とは何か-企業の異質性と21世紀の国際経済-

著者による紹介文

グローバル化を基礎から理解するために

急速に進むグローバル化をどのように理解し、グローバル化にどのように対応していくかは、世界中の政策担当者・企業経営者にとって大きな課題となっています。本書は、そのような課題に対して、最先端の経済学研究の成果に基づいて、応えようと試みた小著です。

21世紀に現れた新々貿易理論と呼びうる新しい一群の研究は、国際貿易・外国直接投資に対する経済学者の理解を刷新しました。この10年で国際貿易・外国直接投資の理解はどこまで進んだのか、本書は、専門家以外の方でも分かるよう、極力平易に伝えようとしています。

執筆にあたっては、新々貿易理論の核心を説明するのみならず、「製造業の空洞化」や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)といった日本経済の懸案にも留意しつつ、幅広いテーマを簡潔に扱うように努めました。たとえば、商社が貿易に果たす役割やサービス貿易、自由貿易協定の効果といったテーマについて、最新の研究状況に基づいた議論を展開しています。

なお、本書の多くの部分は、経済産業研究所ウェブ連載コラム『国際貿易と貿易政策研究メモ』(2010~2014)を基にしています。もちろん、書籍にするうえで、随所で加筆改訂を行っています。これまで本コラムをお読み下さった多くの方々に、この場を借りて御礼を申し上げますとともに、本書をお手にとって頂きますようお願い申し上げます。

著者として、本書が国際貿易・外国直接投資の構造に対する理解を深める一助となることを心より願います。

2015年12月7日
田中 鮎夢

著者(編著者)紹介