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グローバル経営戦略
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著:元橋 一之
著者による紹介文
日本企業の真のグローバル化への一助となる一冊
21世紀の到来とともにグローバル経済を巡る環境は大きく変化してきた。その中でも重要なのは新興国の台頭である。世界経済における日米欧といった先進国のGDPシェアは、2000年時点の8割弱から、2010年には6割近くまで落ち込んだ。筆者の試算によるとこのシェアは2020年には5割程度、2030年には4割程度まで割り込む。その一方でプレゼンスが高まっているのは中国、インド、ブラジルといった新興国である。人口でいうと1割の国が、全体の9割の富を稼ぎ出すという先進国を中心とした世界経済の図式は崩れつつある。グローバル企業においては、このような新たな時代に対応した経営戦略を構築する必要性が高まっている。
本書は、新興国の台頭に対応したグローバル企業の経営戦略について体系的に取りまとめたものである。これまでの国際経営論やグローバルビジネスに関する教科書は主に先進国を対象としたものであるのに対して、本書は先進国とはビジネス環境が大きく異なる新興国に対する戦略をメインテーマとしていることに特徴がある。また、新興国の中でも21世紀の2大大国といえる中国とインドを取り上げ、それらの国において事業を展開する企業のケーススタディを織り交ぜることで、日本などの先進国とは異なるビジネスの現場を感じ取れるよう配慮した。
更に、国内事業とは異なる海外事業という狭い切り口で話を進めるのではなく、国内だけでなく海外の経営資源も総動員した真のグローバル企業を目指した企業全体としての経営戦略のあり方を念頭においた内容としている。売上の半分以上は海外からで、従業員数も海外子会社の方が圧倒的に多いという日本企業は少なくない。しかし、そのガバナンス構造は日本の本社が中心で、進出先の多様性を生かした世界的な最適な経営組織からは一般的に程遠い状況である。ビジネスの主戦場が国内から海外、海外でも新興国に移る中、企業組織についてもグローバルレベルでの最適化を進める必要性が高いと思いから、書名も『グローバル企業の経営戦略』とした。
本書が日本企業の真のグローバル企業へと飛躍する一助になればと考えている。