プロジェクト概要
わが国の90年代以降はマイナス成長が続き生産性も著しく低下しており、持続可能な成長をするためには、生産性の向上は必要不可欠であると認識されている。生産性計測では、製造業を中心に企業や事業所のパネルデータを用いた分析が盛んに行われてきた。標準的な方法として、生産構造をブラックボックス的に捉えて、たとえば利益を労働と資本といった投入要素に回帰し、投入に比してどれだけ多くの利益を得たかを計算するものである。一例は全要素生産性(Total Factor Productivity)分析であり、これは汎用性のある有効な手法であるが、推定されたTFPは深刻なバイアスが生じることが指摘されてきた。既存の手法により生産性を計測し、生産性の下降が観察された際、その原因が技術力の後退によるものか、需要の縮小によるものかを識別することができない。これでは、本来は需要刺激政策をとるべきなのに、生産側を補助するという逆の政策をとってしまいかねない。本プロジェクトでは、この問題を解決するべく経済変動の供給要因と需要要因を分解し、企業の生産性や技術力を正しく計測することを目的としている。本年度からは、TFPでは生産性を捉えることが困難なサービス産業の生産性計測に特化して研究を行う。サービス産業は近年、GDPの7割を占め、経済活動にとっても労働市場の大きさからも非常に重要な業種であるが、データ入手の困難さや主要産業と認識されなかった経緯から先行研究は稀少である。サービス産業の各業種の付加価値の源泉を明らかにした上で生産性計測モデルを構築し、大規模マイクロデータを用いた統計解析を行っていく。
プロジェクト期間: 2015年6月 1日 〜 2017年3月31日