開催案内
第2期トランプ政権では、第1期と同様に貿易摩擦、関税闘争、中国との戦略的競争が中心になると予測されていた。しかし、現在進みつつあるのは、世界秩序の単なる混乱ではなく根本的な変化であり、取引的な外交や経済的威圧にとどまらず、長年続いてきた同盟関係を揺るがし、多国間機関を弱体化させ、地政学的な分断を加速させるような再編成である。
米国がNATOから距離を置き、世界貿易の枠組みを見直し、ナショナリズムやポピュリズム勢力と連携する動きは、新たな時代の到来を示唆している。このような状況下で、既存の秩序がどのように適応し得るのか、その空白を埋める主体は誰なのか。一つの対応策は「有志連合(Coalitions of the willing) 」の形成であり、例えばG20の気候クラブは米国が完全に参加しなくても効果的に機能しうる。地域的な同盟や課題に基づくパートナーシップは、分断される世界においてレジリエンス(耐性)を提供できるかもしれない。
欧州にとって、この変化は安全保障と経済政策の両面における「戦略的自律性」の確立を求めるものとなった。欧州がその繁栄と競争力を維持するためには、防衛力を強化し、経済的強制力に対抗し、結束を守らなければならない。ドラギ前ECB総裁とレッタ元イタリア首相が提案した改革案は、生産性の向上と米国との差を縮めるための枠組みを提供しているが、同改革案を実施できるかどうかが最大の課題とされている。
本セミナーでは、経済政策研究センター(CEPR)のベアトリス・ウェダー・ディ・マウロ所長を講師としてお招きし、破壊的な力が支配する世界の経済的安全保障について欧州の視点から議論いただく。
イベント概要
- 日時:2025年5月15日(木) 12:15-13:15
- 開催方法:オンライン開催(Live 配信)
- 開催言語:英語
- 参加費:無料
- 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
- お問合せ:経済産業研究所コンファレンス担当 木下
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参加申し込み
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講演者・略歴(敬称略)
- スピーカー:
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- ベアトリス・ウェーダー・ディ・マウロ(経済政策研究センター(CEPR)所長 / 高等国際問題・開発研究所(ジュネーブ)教授)
Beatrice Weder di Mauro is the President of the Centre for Economic Policy Research (CEPR) and holds the André Hoffmann Chair of Economics, Climate, and Nature Finance at the Geneva Graduate Institute. Previously, she was a Research Professor at INSEAD Singapore (2015–2022) and a Professor of Economics at Gutenberg University of Mainz in Germany. From 2004 to 2012, she was a member of the German Council of Economic Experts. She continues to advise governments, international organizations, and central banks, including the European Commission, the governments of Germany and Switzerland, the ECB, Deutsche Bundesbank, and the IMF. She has served on the boards of major global companies such as Roche, UBS, and ThyssenKrupp, and currently sits on the boards of Unigestion and Bosch. Her research focuses on macroeconomics, financial crises, and climate and nature finance.
- ベアトリス・ウェーダー・ディ・マウロ(経済政策研究センター(CEPR)所長 / 高等国際問題・開発研究所(ジュネーブ)教授)
- コメンテータ:
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- 山口 仁(経済産業省通商政策局総務課長)
- モデレータ:
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- 冨浦 英一(RIETI 所長 / 大妻女子大学データサイエンス学部長)