開催案内
国際貿易や直接投資など、国際経済学の分野で最先端の研究をしている国内外の研究者を招聘して、最先端の研究報告をしてもらう。プロジェクトメンバーにもプロジェクトに関連した論文の報告をしてもらう。そして、報告された研究に対して、自由にディスカッションを行う。さらに、レセプションやランチなどの時間帯に研究交流を図る。
https://sites.google.com/view/hg-conference2024/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
イベント概要
- 日時:2024年12月14日(土)09:00~17:25/12月15日(日)09:15~17:40
- 場所:学習院大学 中央研究棟12階 国際会議場 (東京都豊島区目白1-5-1)
- 開催言語:英語
- 主催:一橋大学、学習院大学、経済産業研究所
プログラム (December 14 (Saturday))
Chair : Yoichi Sugita (Keio University)
09:00-09:15 Opening remark
Jota Ishikawa (Gakushuin University, Hitotsubashi University and RIETI)
09:15-10:10 “Service exports, development and GenAI”
Richard Baldwin (IMD Business School and RIETI)
10:30-11:25 “Production Network Formation, Trade, and Welfare”
Yuhei Miyauchi (Boston University) (with Costas Arkolakis and Federico Huneeus)
11:45-12:40 “Optimal Trade Policies and Labor Markets”
Dan Lu (Chinese University of Hong Kong) (with Yan Bay and Hanxi Wang)
12:40-14:00 Lunch
Chair : Taiji Furusawa (University of Tokyo)
14:00-14:55 “Carbon Tax and Border Tax Adjustments with Technology and Location Choices”
Haitao Cheng (Hitotsubashi University) (with Jota Ishikawa)
15:15-16:10 “Spatial Sorting of Workers and Firms”
Ryungha Oh (Northwestern University)
16:30-17:25 “Anatomy of Market Failures in Monopolistic Competition”
Kiminori Matsuyama (Northwestern University) (with Philip Ushchev)
18:00-20:00 Reception
プログラム (December 15 (Sunday))
Chair : Tomohiko Inui (Gakushuin University)
09:15-10:10 “Exploiting complementarity in applied general-equilibrium models: endogenizing zeros, firm and mode types, capacity constraints”
James R. Markusen (University of Colorado)
10:30-11:25 “How Wide is the Market Border? Perspective from Global Value Chains”
Ayumu Ken Kikkawa (University of British Columbia)
11:45-12:40 “Capital Services in Global Value Chains”
Xiang Ding (Georgetown University)
12:40-14:00 Lunch
Chair : Hiroshi Mukunoki (Gakushuin University)
14:00-14:55 “Cross-border Partial Equity Ownership”
Tomohiro Ara (Fukushima University) (with Arghya Ghosh, Hotaka Morita and Hiroshi Mukunoki)
15:15-16:10 “Pro-Manufacturing Land Policies of Competing Local Governments: A Quantitative Analysis of China”
Yuta Suzuki (Shanghai Jiao Tong University) (with Ming Lu, Xican Xi, Le Xu, and Yuejun Zhong)
16:30-17:25 “Neoclassical Growth in an Interdependent World”
Stephen J. Redding (Princeton University) (with Benny Kleinman, Ernest Liu and Motohiro Yogo)
17:25-17:40 Closing remark
Taiji Furusawa (University of Tokyo)
18:30-20:30 Conference Dinner (Invitation only)
https://sites.google.com/view/hg-conference2024/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/program
開催報告
開催概要:国際貿易や直接投資など、国際経済学の分野で最先端の研究をしている国内外の研究者12名を招聘して、最先端の研究報告をしてもらった。その中には、プロジェクト「グローバル経済が直面する政策課題の分析」のメンバー1名も含まれ、プロジェクトに関連した論文を報告した。そして、報告された研究に対して、自由にディスカッションを行った。
主な成果
12本の論文報告の概要と知見は以下のとおりである。
- Richard Baldwin (IMD Business School and RIETI)は、論文“Service exports, development and GenAI”を報告した。報告では、今後サービス貿易が財貿易を凌駕して主流となることが指摘された。また、デジタル化と GenAI が、生産性を高めるための産業標準化を促すことで、スキルの低い労働者や発展途上国に大きな影響を与えること示した。
- Yuhei Miyauchi(Boston University)は、論文“Production Network Formation, Trade, and Welfare”を報告した。本論文では、まず多地域一般均衡貿易モデルを構築し、内生的生産ネットワーク形成のインプリケーションを得ている。そして、チリの企業間取引データを用いて、輸入関税の引き下げによって国内のサプライヤーとバイヤーのつながりが強くなっていることを示し、それがモデルからのインプリケーションとコンシステントであると指摘している。
- Dan Lu(Chinese University of Hong Kong)は、論文“Optimal Trade Policies and Labor Markets”を報告した。本論文では、多産業リカードモデルにおいて、労働市場が異なる場合(とくに労働市場が効率的な場合と非効率的な場合)の最適貿易政策を導出している。最適貿易政策の明示的なフォーミュラの導出は、一般均衡モデルにおける最適政策を理解するのに役立つ。
- Haitao Cheng (Hitotsubashi University)は、論文“Carbon Tax and Border Tax Adjustments with Technology and Location Choices”を報告した。本論文では、自国の一方的な炭素税と国境税調整 (BTA) を分析するための国際寡占モデルを構築し、炭素税は世界の排出量の削減には効果的でない可能性や炭素税率の上昇は世界の排出量を増加させる可能性があることを指摘している。また、自国の高い炭素税率は必ずしも海外での生産を誘発するわけではなく、世界の排出量は、税率が中程度の範囲にあるときに最大になる可能性があることを示している。
- Ryungha Oh (Northwestern University)は、論文“Spatial Sorting of Workers and Firms”を報告した。本論文では、異質的な労働者と企業の双方が移動可能な状況で双方のソーティングを考察できるモデルを構築している。モデルでは、労働者と企業の立地選択は互いに影響を及ぼし、政府の介入がない下では労働者と企業の過度の集中が生じることが示され、それをドイツの行政マイクロデータを用いて確認している。さらに、アメリカの地域データを用いて、過度の集中を解消することで経済厚生が向上することを示している。
- Kiminori Matsuyama (Northwestern University)は、論文“Anatomy of Market Failures in Monopolistic Competition”を報告した。本論文では H.S.A., HDIA, and HIIAの3 つのクラス以外の 2 つのホモセティック需要システムを研究し、需要弾力性の分散がある場合、均衡参入が競争促進的かつ最適となる需要弾力性の分散の閾値が存在することを示している。
- James R. Markusen (University of Colorado)は、論文 “Exploiting complementarity in applied general-equilibrium models: endogenizing zeros, firm and mode types, capacity constraints” を報告した。報告では、応用一般均衡 (AGE) モデルにおけるゼロの扱いに焦点が当てられた。特に、提案された手法では、離散の企業数を扱い、内生的マークアップ、正の総利益などを考慮することができる。
- Ayumu Ken Kikkawa (University of British Columbia)は、論文“How Wide is the Market Border? Perspective from Global Value Chains”を報告した。本論文では、米国の輸入に関する企業間データを用い、ある企業ペアの価格が他のペアの外生的な価格変動にどのように反応するかを分析している。推定された交差価格弾力性を活用し、従来は仮定に基づいて定められてきた市場の境界を導出している。
- Xiang Ding (Georgetown University)は、論文“Capital Services in Global Value Chains”を報告した。本論文では、まず、セクター間の資本サービスフローに関する初の世界的データセットを構築している。そして、動学的一般均衡モデルを利用して、世界の生産における細分化された資本の重要性を定量化している。貿易自由化の下では、各国の産出は、資本サービスコストの減少が最も大きいセクターに再配分され、資本所得が大きく増加することを発見した。
- Tomohiro Ara (Fukushima University)は、論文“Cross-border Partial Equity Ownership”を報告した。グローバリゼーションが進んで国境を超えた資本提携が活発化する際に、どのように政府が外資規制を設けるべきかについては、研究が不十分だった。本論文では、政府が企業だけでなく消費者にも配慮しつつ、この資本提携の水準を内生的に決め、それがグローバリゼーションの進化とともに、どのように変化させるべきかを考察している。政府は国境を超えた提携企業が求める資本水準より低く抑え、外資規制を設ける合理性があること、そしてグローバリゼーションの進化とともに、政府は外資規制を緩める必要性があることを政策的含意として得ている。
- Yuta Suzuki (Shanghai Jiao Tong University)は、論文“Pro-Manufacturing Land Policies of Competing Local Governments: A Quantitative Analysis of China”を報告した。本論文では、中国の地方政府が土地利用を指定して土地市場を細分化した結果、製造業がサービス業や住宅業に比べて大幅な割引を受けており、特に製造業の相対的生産性が低い省でそれが顕著であることを指摘した。そして、それを多部門定量的空間均衡モデルで確認している。さらに、既存の政策は、地方政府の介入がないシナリオと比較して国の厚生を大幅に低下させるが、地域厚生最大化政策は協力均衡に近い結果を達成することを示している。
- Stephen J. Redding (Princeton University)は、論文“Neoclassical Growth in an Interdependent World”を報告した。本論文では、開放経済の新古典派成長モデルを一般化して、貿易および資本市場の摩擦、および国をまたがる財と資本の不完全な代替性を考慮できるようにしている。このモデルは、米国と中国の分離など、貿易および資本市場の摩擦の両方における反事実的変化を研究するのに適している。