RIETIイノベーションセミナー

企業内のネットワーク構造と先行技術の発展競争 (“On the Heels of Giants: Internal Network Structure and the Race to Build on Prior Innovation”)

イベント概要

  • 日時:2024年11月19日(火)16:00-17:30
  • 会場:オンライン
  • 講演:Brian Silverman氏(トロント大学教授)
  • 司会:和田 哲夫 氏(学習院大学教授)
  • 開催言語:英語

セミナーの内容

イノベーション研究においても企業戦略研究においても、研究開発投資の成果の専有可能性は最も重要な研究対象の1つであるが、企業内のネットワーク組織構造が、企業内の先行技術を発展させる競争における優位性を確保する上でどのような役割を果たすかについての研究は限られている。セミナーでは、イノベーション研究と社会ネットワーク研究それぞれの蓄積の上に立って、企業内の人的なネットワーク構造が、社内発明を発展させる競争における優位性に与える影響を、企業の大規模パネルデータによって分析した研究成果が報告された。

セミナーでは先ず、社内発明の後続イノベーションにおける当該企業の競争優位性(社内発明を引用した発明全体における自社引用発明の比率)が高いほど、当該社内発明の価値は統計的に有意に高いことが報告された。次に企業内の人的なネットワーク構造を、社内の共同発明者によるネットワークがどの程度相互につながっているかの指標(統合比率)で評価し、その水準が高い企業では社内発明を引用する発明における自社引用比率が統計的に有意に高い関係にあることも報告された。更に、このような効果は、社内発明の年齢が若いほど大きいことも報告された。すなわち、企業内の統合的なネットワーク構造は先行技術の発展競争における優位性を高め、先行発明の価値を高める傾向にある。

質疑では、ネットワーク構造を特徴付けるために複数の指標(統合の度合いと多様な専門性)の必要性、自社引用比率と社内ネットワークの統合比率の推計における同時性、統合比率が高いことの他のタイプのイノベーションへの負の影響の可能性等を議論した。

文責 経済産業研究所 長岡貞男

発表資料

発表資料 [PDF:2.5MB]