イベント概要
- 日時:2024年3月4日(月)16:00-17:30
- 会場:オンライン
- 講演:Paul H. Jensen氏(University of Melbourne)
- 司会:和田 哲夫 氏(学習院大学教授)
- 開催言語:英語
セミナーの内容
大学と民間企業間の生産的な共同研究を誘導する目的で、OECD 諸国の政府は多額の資金を投入しており、産学連携は単に大学や公的研究機関から知識が流入する経路というだけでなく、公的研究者が産業界の問題を解決することを促すメカニズムとして注目されている。産学連携への補助と企業のパフォーマンスに正の相関があることが多いことを示した研究はあるが、その関連性が因果関係かどうかは研究課題として残っている。本セミナーでは、豪州の産学連携を条件とした大学への研究助成プログラムへの応募データを利用して、因果関係を分析した研究が紹介された。
主要な知見として以下の紹介があった。第1に、資金助成の対象となったプロジェクトへの参加企業を措置対象、応募したが資金提供されなかったプロジェクトへの参加企業を比較対照群(過去の企業パフォーマンス、年齢、産業分類でマッチ)とした差分の差分の分析結果によれば、前者の企業の方が売上が有意に拡大した。但し、大企業についてのみこのような効果が有意であり、また特許や生産性には有意な影響は観測されなかった。第2に、応募したが資金提供されなかったプロジェクトへの参加企業を措置対象、応募しなかった企業を比較対照群とした差分の差分の分析結果によれば、前者の企業の方が売上が有意に拡大した。但し、中小企業についてのみ有意であった。
企業の売上についてのみ効果が観測された理由、資金提供されなかったプロジェクトへの参加企業のパフォーマンスが改善した理由とメカニズム(特に応募自体が産学連携を促進した可能性)、大学から企業への技術移転のメカニズム(企業が研究資金の4分の1を貢献することが条件となっているが、人的な貢献がどの程度重要なのか)など、セミナー参加者との間で活発な意見交換があった。
文責 経済産業研究所・東京経済大学 長岡貞男
発表資料
発表資料 [PDF:969KB]