開催案内
国際貿易や直接投資など、国際経済学の分野で最先端の研究をしている国内外の研究者を招聘して、最先端の研究報告をしてもらう。プロジェクトメンバー(3名の予定)にもプロジェクトに関連した論文の報告をしてもらう。そして、報告された研究に対して、自由にディスカッションを行う。さらに、レセプションやランチなどの時間帯に研究交流を図る。
https://sites.google.com/view/hg-conference2023/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
イベント概要
- 日時:2023年12月16日(土)09:10~17:20/12月17日(日)09:30~17:30
- 場所:学習院大学 中央研究棟12階 国際会議場 (東京都豊島区目白1-5-1)
- 開催言語:英語
- 主催:一橋大学、学習院大学、経済産業研究所
プログラム(December 16 (Saturday))
Chair : Taiji Furusawa (University of Tokyo)
9:10-9:30 Opening remarks
Jota Ishikawa (Gakushuin University, Hitotsubashi University)
9:30-10:20 “China’s Retaliatory Tariffs against the US: Firm Import-Export Linkage along Global Production Line”
Miaojie Yu (Liaoning University)
10:40-11:30 “A Rising Tide? The Local Incidence of the Second Wave of Globalization”
Greg C. Wright (UC Merced)
11:40-13:00 Lunch
13:00-13:50 “Global Value Chains: Evidence from U.S. Manufacturing Firms”
Kei-Mu Yi (University of Houston, Federal Reserve Bank of Dallas) (with Aaron Flaaen, Fariha Kamal, and Eunhee Lee)
Chair : Yoichi Sugita (Keio University)
14:10-14:50 “Partial Cross-Ownership and Merger Control in International Trade”
Hiroshi Mukunoki (Gakushuin University)
15:20-16:10 “A Global Minimum Tax for Large Firms Only: Implications for Tax Competition”
Hayato Kato (Osaka University) (with Andreas Haufler)
16:30-17:20 “Love-for-Variety”
Kiminori Matsuyama (Northwestern University) (with Philip Ushchev)
プログラム(December 17 (Sunday))
Chair : Hiroshi Mukunoki (Gakushuin University)
9:30-10:20 “Rethinking Revealed Comparative Advantage with Micro and Macro Data”
Gianmarco Ottaviano (Bocconi University) (with Hanwei Huang)
10:40-11:30 “R&D Subsidies and Multi-product Firms”
Toshihiro Okubo (Keio University) (with Rikard Forslid )
11:50-12:40 “The IT Boom And Other Unintended Consequences of Chasing the American Dream”
Gaurav Khanna (UC San Diego) (with Nicolas Morales)
12:40-14:00 Lunch
Chair : Eiichi Tomiura (Hitotsubashi University)
14:00-14:50 “Deforestation: A Global and Dynamic Perspective”
Heitor Pellegrina ( University of Notre Dame) (with Farid Farrokhi, Elliot Kang, and Sebastian Sotelo)
15:10-16:00 “Impact of Border Rejection Experience on Export Performance: Firm-level Evidence from China”
Ayako Obashi (Keio University) (with Tomohiko Inui and Qizhong Yang)
16:20-17:10 “Hidden Exposure: Measuring U.S. Supply Chain Reliance”
Richard Baldwin (IMD Business School) (with Rebecca Freeman and Angelos Theodorakopoulos)
17:10-17:30 Closing remarks
Eiichi Tomiura (Hitotsubashi University)
18:00-20:00 Conference Dinner (Invitation only)
https://sites.google.com/view/hg-conference2023/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/program
開催報告
国際貿易や直接投資など、国際経済学の分野で最先端の研究をしている国内外の研究者12名を招聘して、最先端の研究報告をしてもらった。その中には、プロジェクト「グローバル経済が直面する政策課題の分析」のメンバー3名も含まれ、彼らはプロジェクトに関連した論文を報告した。そして、報告された研究に対して、自由にディスカッションを行った。
主な成果
12本の論文報告から以下のような知見を得た。
- Miaojie Yu (Liaoning University)は、論文“China’s Retaliatory Tariffs against the US: Firm Import-Export Linkage along Global Production Line”を報告した。この論文は、米中貿易戦争期間(2016年~2019年)において、米国製品に対する中国の報復関税の企業レベルでの効果を分析している。関税の国内価格への転嫁が不完全であったこと、関税が他国への輸出の減少をもたらしたことを指摘している。
- Greg Wright (UC Merced)は、論文“A Rising Tide? The Local Incidence of the Second Wave of Globalization”を報告した。この論文では、1970 年代に起こった米国の輸出入の大幅な増加が米国の労働市場に短期および長期的に与えた影響を推定している。雇用・人口比率に対する平均的なネットの影響はプラスだが、最初の 10 年間に集中しており、長期的な影響はほとんどなかったことが報告された。
- Kei-Mu Yi (University of Houston, Federal Reserve Bank of Dallas)は、論文“Global Value Chains: Evidence from U.S. Manufacturing Firms”を報告した。この論文は、米国の輸出に具現化された国際インプットを事業所および企業レベルで測定し、米国のグローバルバリューチェーンを特徴付ける新しい方法を提供している。
- Hiroshi Mukunoki (Gakushuin University)は、論文“Partial Cross-Ownership and Merger Control in International Trade”を報告した。この論文は、部分的相互所有権(PCO)が国際貿易における市場競争と合併管理政策にどのような影響を与えるかを分析するための寡占モデルを構築し、競争当局が国際 PCO をより厳しく規制する必要があることを示唆している。
- Hayato Kato (Osaka University)は、論文“A Global Minimum Tax for Large Firms Only: Implications for Tax Competition”を報告した。この論文では、グローバルに合意された最低税率 (GMT) が一定の規模の基準を超える企業にのみ適用されることの評価を理論的に行っている。タックス・ヘイブン国と非タックス・ヘイブン国がGMTの非対象企業の税率を非協力的に設定する場合、それぞれの国の税収にどのような効果をもたらすのかを分析している。
- Kiminori Matsuyama (Northwestern University)は、論文“Love-for-Variety”を報告した。この論文では、財のバラエティの増加による効用の増加が、需要構造にどのように依存しているかを分析している。とくに、3つのホモセティックな需要関数に注目することで、より多くのバラエティが利用可能になったときに別のバラエティとの代替性が高まる場合に、バラエティの増加によって得られる利益が減少するという直観をうまく説明できるようになることを示している。
- Gianmarco Ottaviano (Bocconi University)は、論文“Rethinking Revealed Comparative Advantage with Micro and Macro Data”を報告した。この論文は、バラッサの顕示比較優位指標がリカードの比較優位の存在、程度、および原因を特定するのに十分な統計指標ではないことを指摘し、相対的な単位投入係数と相対的な要素賦与の両方が役割を果たす定量的取引モデルに基づいた、リカードの比較優位の測定に対する代替的な構造的アプローチを提示している。
- Toshihiro Okubo (Keio University)は、論文“R&D Subsidies and Multi-product Firms”を報告した。この論文は、メリッツモデルをベースに、国家間を移動でき、複数の製品を製造する企業のモデルを構築し、新製品開発の固定費に対する補助金を分析している。貿易費用の低下が、一国による一方的な補助金でも二国のナッシュ補助金でもその引下げに繋がることを示している。
- Gaurav Khanna (UC San Diego)は、論文“The IT Boom And Other Unintended Consequences of Chasing the American Dream”を報告した。この論文は、米国の移民政策とインターネットブームが米国だけでなくインドのテクノロジーブームにどのような影響を与えたかを分析している。米国のH-1Bビザ取得者数制限が、インド人に国内でのコンピューター関連の職業への転向を促し、米国からインドへIT 生産の移行を促進したことを指摘している。
- Heitor Pellegrina (University of Notre Dame)は、論文“Deforestation: A Global and Dynamic Perspective”を報告した。この論文は、動学的な世界貿易モデルにおいて森林破壊を分析している。農業が他の部門の需要を補完するものであれば、たとえ貿易費用低下が個々の経済だけで起こった場合には森林破壊が増加するとしても、貿易費用の世界的な削減が森林破壊の減少をもたらすことを理論的かつ定量的に示している。
- Ayako Obashi (Keio University)は、論文“Impact of Border Rejection Experience on Export Performance: Firm-level Evidence from China”を報告した。輸出企業は、輸出国の技術規制や製品規格を満たしていない場合、輸入の許可を得られない。この論文は、技術要件の順守が輸出企業の市場参入の障壁となるだけでなく、場合によっては輸出企業の生産能力の向上や競争力向上につながることを示している。
- Richard Baldwin (IMD Business School)は、論文“Hidden Exposure: Measuring U.S. Supply Chain Reliance”を報告した。この論文では、サプライチェーンの問題の 3 つの核心的要素、つまりサプライチェーンを混乱にさらすリンクの測定、混乱を引き起こすショックの性質、混乱の影響を緩和する政策の基準について検討している。そして、サプライチェーンの混乱に関する懸念とそれに対処する政策は、製造部門全体ではなく個々の製品に焦点を当てるべきだと結論づけている。