京都大学-経済産業研究所 共催国際カンファレンス

文理融合研究のこれから:イノベーション社会の実現に向けて

イベント概要

  • 日時:2023年12月4日(月)13:00-17:05
  • 場所:日仏会館ホール(東京都渋谷区恵比寿3-9-25)
  • 開催言語:英語
  • 主催:京都大学、経済産業研究所

プログラム

司会:佐分利 応貴(RIETI国際・広報ディレクター)

13:00-13:05 開会挨拶

中島 厚志(公益財団法人日仏会館理事長、RIETIコンサルティングフェロー)


モデレーター:松田 文彦(京都大学教授)

13:05-13:25 イントロダクション「Innovation Ecosystem and Socio-Life Science」(イノベーション・エコシステムと社会・生命科学)

矢野 誠(京都大学特任教授)

13:25-14:10 基調講演「Innovative science for societal innovation」(社会変革のための革新的科学)

フィリップ・クリルスキ(パスツール研究所元所長、コレージュ・ド・フランス名誉教授)

14:10-14:40 報告1「Socio-Life Scientific Factors to Control the Spread of the COVID-19」(COVID-19感染を抑制する社会・生命科学的要因)

広田 茂 (京都産業大学教授、RIETIファカルティフェロー)

14:40-15:10 報告2「Using mathematical models to better understand the spread of infectious diseases」(感染症拡大をより深く理解するための数理モデル)

シモン・コシュメ(パスツール研究所, Mathematical Modelling of Infectious Diseasesユニット長)※オンライン参加

15:10-15:20 休憩


モデレーター:矢野 誠(京都大学特任教授)

15:20-16:05 特別講演「Is green growth possible?」(グリーン成長は可能か?)

フィリップ・アギヨン(コレージュ・ド・フランス教授)※オンライン参加

16:05-16:20 日本パスツール研究所からの報告「Effect of Ecosystem Disturbance on Emerging Vector-borne Diseases」(生態系の撹乱が媒介性疾患の発生に及ぼす影響)

アナワット・サクンタバイ(一般財団法人日本パスツール財団代表理事)

16:20-16:50 パネル・ディスカッション「Future Perspective of Integration of Natural and Social Sciences」(文理融合研究のこれから)

[パネリスト]

フィリップ・クリルスキ(パスツール研究所元所長、コレージュ・ド・フランス名誉教授)

フィリップ・アギヨン(コレージュ・ド・フランス教授)※オンライン参加

矢野 誠(京都大学特任教授)

松田 文彦(京都大学教授)

[モデレーター]

ミリアム・バラタン(エクス=マルセイユ大学准教授、前在日フランス大使館科学技術担当官)

16:50-17:00 締めくくり

ディディエ・マルティ=ドシュ(在日フランス大使館科学技術参事官)

17:00-17:05 閉会挨拶

浦田 秀次郎(RIETI理事長)

※括弧内日本語演題は仮訳

開催報告

社会科学と生命科学の融合研究は、今般の新型コロナウイルス感染症との闘いだけでなく、イノベーションを促進することによって、世界中の人々の健康と経済の向上に大きく貢献することが期待されている。本会議は、このような自然科学と社会科学の融合研究を発展させるための重要な機会を提供することを目的としたものである。

冒頭挨拶では、中島厚志日仏会館理事長・元RIETI理事長から、今日の社会における文理融合研究の意義、そしてRIETIの2020年度からの中期計画において融合領域(文理融合・異分野融合)が位置づけられた経緯などについて説明がなされた。

矢野誠京都大学特任教授によるイントロダクション「イノベーション・エコシステムと社会生命科学」では、イノベーションを、個別の発明やアイディアが社会慣習や制度に受容される過程だと定義した上で、イノベーションを通じて社会の構成員が幸せになる動学的メカニズムを提示した。

フィリップ・クリルスキ コレージュ・ド・フランス名誉教授・パスツール研究所名誉所長による基調講演「社会変革のための革新的科学」では、免疫学が社会科学に与えることのできる示唆について、特に複雑系システムにおいて内外の危機を克服して機能し続けることのできる能力(頑健性)の重要性を中心に説明された。また、「RESOLIS」イニシアチブを紹介した。これは、地域の社会エコシステムの発展を可能にするボトムアップ・アプローチで、フランスにおける社会活動を改善するために地域のイニシアチブを集めるというコンセプトに基づいている。

広田茂京都産業大学教授・RIETIファカルティ・フェローによる報告1「COVID-19感染を抑制する社会・生命科学的要因」では、パスツール研究所から提供された高精度抗体検査を用いてながはまコホートにおいて構築されたデータに基づき、COVID-19感染と行動変容、社会・経済的特性との関係が報告された。

シモン・コシュメ パスツール研究所感染症数理モデルユニット長による報告2「感染症拡大をより深く理解するための数理モデル」では、今回のフランスにおける経験を中心に、数理モデルとデータを活用して感染症伝染のダイナミクスを解明していった実績が説明された。数理モデルは、感染者や必要な医療資源の予測のほか、非医療的介入の効果分析、ワクチン接種戦略の立案などに役立てられた。

フィリップ・アギヨン ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授による特別講演「グリーン成長は可能か」では、地球温暖化を促進する「ダーティ」な投資を既に多く行っている企業は新たなダーティ投資を行いやすいという経路依存性があり、クリーンな投資を促進するための補助金が炭素税に加えて必要であること、シェールガスや原子力などの中間的なエネルギー源に対する投資は長期的には温暖化ガスの排出を増大させてしまう可能性があること、そして環境問題を重視する消費者が多い社会ほど、企業はクリーン投資を行うので、市民社会のあり方が重要であることが指摘された。

アナワット・サクンタバイ 日本パスツール財団所長による報告「生態系の攪乱が新興媒介性疾患に及ぼす影響」では、地球温暖化によりデング熱の流行地域に変化が見られていること、そうした地球規模の新興感染症の流行に対応するためのパスツール研究所のネットワークが説明されるとともに、日仏間で合意されたロードマップにおける保健分野での協力内容が紹介された。

パネル・ディスカッション「文理融合研究のこれから」では、矢野教授、クリルスキ教授、アギヨン教授、そして松田文彦京都大学教授が登壇した。RIETI及び京都大学におけるこれまでの文理融合研究の歩みが振り返られた後、イノベーションが社会に実装されるためには、市民参加、アイディアの自由な流れとそれを可能にする議論のプラットフォーム、教育におけるサイロ打破、技術と制度のインターアクション、競争と協力の調和などが重要であることが指摘された。

ディディエ・マルティ=ドシュ在日フランス大使館科学技術担当参事官が各セッションを要約したあと、浦田秀次郎RIETI理事長が挨拶に立ち、引き続き自然科学と社会科学の融合研究を進めていく決意を表明して閉会した。