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ポスト・コロナ世界のグローバル・バリューチェーン

開催案内

1990年代以降、急速に進展した経済のグローバル化という現象は、世界に多大な富をもたらした一方で、現在、米中対立や地球温暖化など様々な課題を我々に突きつけている。ことに近年、企業経営者や政策立案者の間で懸案となっているのが、不測の事態に対するサプライチェーン脆弱性の問題だ。国際生産分業の進展に伴い、サプライチェーンの効率的な編成が突き詰められた結果、生産拠点が一部の地域へ極度に集中するような状況が生み出された。それに伴う重大なリスクについては、自然災害(地震、津波、台風、洪水)や地政学的なもの(紛争やテロリズム、貿易戦争)、さらには現在進行形で世界を脅かしているパンデミックなどによって広く認識されつつある。

ことに、ここ数十年間で飛躍的な経済発展を果たした中国は、「世界の工場」としてあらゆる製造業が集中し、グローバル・バリューチェーン(GVC)の中心を成すに至った。その影響力の大きさは、この大規模感染によって同国からの部品供給が滞り、多くの国の生産活動が広範囲で止まったことからも明らかである。今後、パンデミックの災禍を引き合いに米中対立がさらに激化することが予想され、各国の企業はその対応に追われることとなるだろう。

では、ポスト・コロナの世界経済におけるGVCの「かたち」は、どのようなものとなるのであろうか。この報告では、長期的には、GVCがアジアや北米といった「地理的近接性」に基づくネットワークから、法や技術体系などの「制度的近似性」によって結ばれたネットワークへと移り変わっていくことを、国際生産分業理論の視点から解説する。

イベント概要

  • 日時:2020年5月15日
  • 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)

講演者・略歴(敬称略)

  • スピーカー:猪俣 哲史(日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所上席主任調査研究員)
  • モデレータ:小野寺 修(経済産業省通商政策局通商交渉官)