RIETI - Hitotsubashi - Gakushuin - Toyo International Workshop on Firm Dynamics(議事概要)

議事概要

Morning Session: FDI and Agglomeration

座長:Tomohiko Inui (Gakushuin)

タイトル:Does Bank FDI Promote Firm FDI? Evidence from China's Outbound Multinational Activity

発表者;Davin Chor (Dartmouth)

銀行部門の対外直接投資(Outward FDI)が同国の非銀行部門の対外直接投資を促進するかを検証した。同国からの銀行部門のFDIにより、FDIコストが減少し、製造業のFDIが促進されるという予測の下、1990年から2014年の中国の製造業事業所レベルデータを用いた分析を行った。結果、t-1期の中国のBig5の銀行のFDIが中国企業(製造業)のt期のFDIを促進するとの結果が得られた。この他、様々なSensitivity test(分析のタイミングを変えたり、IVを用いた推計など)を行っても、先の結果が頑健であることが示された。

討論者:Toshihiro Okubo (Keio)

・FDIの目的は様々(Greenfield FDI、多角化など)
・目的により資金需要も変わってくるのではないか
・その他の資金調達の手段(社債発行など)もあるのではないか
・部門間の異質性(外部資金依存度の違い)があるのではないか
・中国政府の政策の影響があるのではないか

タイトル:Matching and Agglomeration: Theory and Evidence from Japanese Firm-to-Firm Trade

発表者;Yuhei Miyauchi (Stanford/Boston)

経済活動が集積するのはなぜか。企業間のマッチング率はマッチングの規模に関する収穫逓増によりサプライヤーの数と共に増加するのか。2007年から2016年の企業相関データ(Firm-to-Firmデータ)を使って分析をした。結果、予期せぬサプライヤーの倒産後の再マッチング率は、集積している地域に立地している企業ほど高いことがわかった。また企業間マッチングの構造モデルも構築し、規模に関する収穫逓増のメカニズムの重要性を確認した。

討論者:Kenta Yamanouchi (Keio)

・誘導型の推計で、地震の影響はバイヤーとサプライヤーの影響は両方にあるのではないか
・操作変数の頑健性をチェックすべきではないか
・構造型の推計で、高生産性企業はより集積している都市に立地する可能性があるのではないか

Keynote Speech

タイトル:Vending Out: Exports During a Domestic Slumps

報告者:Pol Antras (Harvard)

スペインの「輸出の奇跡」を説明する。2008年の金融危機後、スペインは、GDPは停滞しているが、輸出は倍増している。2002年から2013年のスペインの製造業企業データを用い、国内の需要(消費)の低迷と輸出の関係を分析した。OLSの推計では、国内需要と輸出は正の相関がみられたが、操作変数を使った推計の結果、国内需要の低下が輸出の増加につながっていることが分かった。

Afternoon Session 1: Firm Dynamics

座長:Shoko Haneda (Chuo)

タイトル:Shock to Supply Chain Network and Firm Dynamics: An Application of Double Machine Learning

報告者:Daisuke Miyakawa (Hitotsubashi)

膨大な企業データを用いて、企業の倒産や退出を機械学習の手法を用いて分析した。また、企業のサプライチェーンネットワーク変数が企業の退出に与える影響(因果関係)を分析した。結果、機械学習を用いることで、企業の倒産や退出を高いパフォーマンスで予測できることがわかった。また、因果関係の意味で企業間ネットワークの変化が企業の退出に影響を与えることをDouble Machine Learningの手法で確認した。

討論者:Yuta Takahashi (Hitotsubashi)

・企業の退出に与える影響で、なぜネットワークに注目するのか。他にも多くの要因があるはず。
・企業の退出のDecisionのメカニズムは。
・逆の因果関係があるのでは。

タイトル:Size Dependent VAT and Firm Growth

報告者:Masaki Hotei (Daito-Bunka)

日本では、売り上げが1000万円以下の企業は消費税の免税事業者となる。そのため、企業は1000万円以下と売り上げを申告する。そのため、1000万円のラインでバンチングが発生している。どのような企業がバンチングを行っているのか2011年から2014年のTSRデータを使って分析した。その結果、生産性が低い企業や、生産性が低くcompliance cost(事務費用)が高い企業がバンチングを行っていることがわかった。

討論者:Makoto Hasegawa (Kyoto)

・内生性の問題があるのではないか。
・生産性の代理変数として、売り上げの中央値を使い、その係数が負であることが、低生産性企業がバンチングをしやすいと結論付けているが、売り上げは企業規模と関係し、閾値に引っかかる企業が多いため、係数が負で有意に出ているのではないか。
・VATシステムに関する知識の欠如だけがバンチングに影響を与えているという結果には違和感がある。

Afternoon Session 2: Misallocation

座長:Ayako Obashi (Aoyama)

タイトル:Intangible Assets and Inter-firm Linkages over the Lifecycle of Firms: Theory and Firm-level Evidence

報告者:In Hwan Jo (NUS)

企業の成長の源泉として無形資産(組織資本)に注目する。企業のライフサイクルで、無形資産の蓄積はどのような役割を果たすのか。無形資産の存在が、資源の配分や集計された生産性にどのような影響を与えるのかをモデルを構築し、質的インパクトを検証する。結果、無形資産(企業間リンケージ)が成長と生産性と関係していること、集計された生産性ショックのチャンネルを増大すること、無形資産の突然の低下により景気後退がもたらされることが示された。

討論者:Kaoru Hosono (Gakushuin)

・組織資本として企業間リンケージを用いるのは適切か。
・組織資本(リンケージ)のメンテナンスコストとは何を示しているのか。
・景気循環に企業間リンケージがどのような役割を果たしているのか。
・モデルで、物的投資のための外部資金調達がなぜ許されていないのか。
・無形資産をコントロールしても、なぜTFPが年齢とともに上昇するのか。

タイトル:Matching Frictions in Firm-to-Firm Trade: A Proposed Field Experiment Design

報告者:Jie Bai (Harvard)

企業間取引のマッチングの際のフリクションは存在するのか。フリクションの結果生じるロスは集計するとどのくらいか。政策的な介入が効率的なマッチングをもたらすか。本研究では、現存するサプライヤーとバイヤーのネットワークの情報をサプライヤーに提供し、その情報が取引の可能性を高めるか介入実験する。現在は、介入実験の準備段階にある。

討論者:Kentaro Nakajima (Hitotsubashi)

・pとσは識別可能か。
・Private informationといっているが、TSRから買えるのではないか。(つまり、お金の問題(Monetary cost issue)ではないか。)