イベント概要
議事録
第1セッション:On the current issues of KLEMS Database
第1発表:"On the Next Revisions of the JIP Database"
深尾 京司 (RIETIファカルティフェロー / 一橋大学)・乾 友彦 (RIETIファカルティフェロー / 学習院大学)・宮川 努 (RIETIファカルティフェロー / 学習院大学)
JSNAの改定に沿ったJIPデータベースの改定の方向性について報告した。具体的には、JSNAの変更に伴い、JIPデータベースも(1)産業分類の改定、(2)FISIMへの対応、(3)償却率の調整、(4)R&Dの資本化を行う予定であることを発表した。
(1)については、精密機械産業が今後はその他のセクターに分割されること、(2)については、日本は2005年以降FISIMを導入しているがJIPも今後対応する方向で検討していることを報告した。(3)については、JSNAとJIPで用いられている償却率の比較を行い、償却率を変更した場合、実質の設備投資額に差が発生することを示した。(4)については、JSNAでは2016年にR&D支出が資本化されることを報告した。その他、派遣労働や自営業者の扱い、リース業の扱いについても言及した。最後に、2016年に大幅なJIPデータベースの改定を行うことを発表した。
第2発表:"The Revision of KIP Database and the Industrial Sources of Growth in Korea"
Hak Kil Pyo (Seoul National University)・Hyumbae Chun (Sogang Universit)・Keun Hee Rhee(Korea Productivity Center)
最初に、2007KIPデータベースの概要について説明した。2007KIPデータベースはEUKLEMSマニュアルに従い、1970年から2005年の期間について72産業の産出、付加価値、中間投入などのデータを作成した。次に2009KIPの改定について報告した。2009KIPではSNAの変更により名目GDPが2000年から2007年で6%上昇したが、GDP成長率の変更はなかった。また、KIPデータベースとAsia KLEMSデータベースについて報告した。KIPは72産業ベースで、Asia KLEMSは32産業ベースのため、産業を集計する必要がある。そのため、Tornqvist indexを使ったアウトプットとインプットの産業の集計方法を紹介した。その後、Asia KLEMSデータを使った成長会計の結果を示した。
最後に、KIPデータベースの将来的な改定の指針について報告した。2008SNAベースの統計は2014年に一部公開されたが、2000年以降しか得られない等の問題がある。また、R&DのGDPに占める割合は4%以上であるため、R&Dの取り扱いの変更(R&Dの資本化)は韓国のGDP統計に大きな影響を与えると考えられる。
KIP2014あるいは2015の改定については、産業レベルでの付加価値と設備投資に関する2000年以前のデータが必要になる。加えて、労働時間と労働構成に関する改定やR&Dの償却率を国際的に比較可能な値に変更する必要があることを報告した。
第3発表:"US Growth and Productivity using New National Accounts with Intellectual Property"
Mun Ho (Harvard University)
第1に、R&DやArtistic originalを投資として扱うなどの2013年における米国のSNAの改定内容について報告した。次に、産業レベルのITとR&Dを用いた分析について、最後に、長期の統計(1947年から2010年)を用いた成長の源泉について、それを3つの期間に分けた分析の結果について発表した。
産業別の分析ではIT集約度とTFP成長率の関係を図示し、IT集約度が高いほどTFP成長率も高いことを示した。また集計されたTFPが産業のTFPのドーマーウェイトによる集計値と再配分効果の和であることを説明し、どのような産業がマクロのTFPの成長率に貢献しているのかを示した。また金融危機後の経済では、非IT関連産業の生産性の下落がマクロの生産性の停滞に影響していることを示した。
第2セッション:Progress Report on China KLEMS and Republic of China KLEMS
第1発表:"Introduction to CIP/China KLEMS Database"
Harry Wu (一橋大学)
CIPデータベースの概要(カバレッジや分類、計測方法やデータ元)について説明をした。その後、アウトプットやデフレーター、労働投入や資本投入の動き、成長会計の結果を示した。最後に現在進んでいるCIPデータベースに関する作業について報告をした。
1980年から2010年の間、37産業分類でデータを構築した。データの構築方法についてはJorgensonらの研究に従っている。Implicit value added deflatorについては、公式の値(NBS)とダブルデフレーション法で今回計測した値(CIP)で乖離があることを示した。特にサービス産業については、公式値よりもかなりインフレが進んでいることを示した。その結果、実質GDPはCIPデータベースでは低くなることも説明した。成長会計の結果、エネルギー産業でTFPが低いこと、農業でTFPが高いことも示した。
第2発表:"China KLEMS Database"
Linlin Sun (Beihang University)
China KLEMSデータの概要の説明を行った。産業分類(33産業)について、データソースについて、投入・産出関係に関する時系列データの整備について、資本投入と労働投入データについて、最後に成長会計について説明した。
資本ストックの推計では、農業の土地の資本ストックの推計も行っている。また、2012年までの資本ストック系列の推計が終了し、レンタル価格については2005年まで計測が終了している。労働投入の推計では、性・学歴・年齢別のデータを構築した。労働者数の系列は2012年まで計測済みである。
第3発表:"On Republic of China KLEMS"
Yih-ming Lin (National Chiayi University)
Taiwan KLEMSデータベースについて概要を説明した。産業分類やデータの期間、産業レベルのデータを集計した付加価値の成長率、各産業の付加価値の成長率について示した。また、Taiwan KLEMSにおける労働投入、中間投入、資本ストックについても説明した。最後に、Taiwan KLMESを作成する上での問題点についても言及した。
Taiwan KLEMSデータベースはDGBASデータを基に、93SNAベースで1981年から2012年の期間、31産業の生産性計測に必要なデータを構築している。製造業の付加価値の成長率については、近年低下していること、第三次産業では、近年上昇していることがわかった。Taiwan KLEMSデータベースに残された課題としては、資本サービスの計測などがある。
第3セッション:Progress Report on India and South East Asia KLEMS
第1発表:"India KLEMS Project"
Deb Kusum Das (University of Delhi)
INDIA KLEMSデータベースの概要(系列の作成方法やデータ元)について説明を行った。INDIA KLMESデータベースでは、National Accountと整合的な投入と産出のデータ系列を作成している。また産業分類についてもAsia KLEMSなどと比較可能な形式になっている。労働投入の系列については、労働者数の系列は既に1980年から2008年まで時系列で作成済みである。労働の質指数は準備中である。資本投入の系列については、INDIA KLEMSでは資本ストックよりも資本サービスを用いている。
作成したデータ系列を基に、TFP成長率を計算した結果、郵便・電信産業のTFP成長率が高く、木材・木製品のTFP成長率が低かった。集計されたTFPの成長率の産業の寄与を見ると、農林水産業の寄与が大きく、建設業の寄与が小さいことが分かった。
今後の課題については、投入、産出の系列、TFP系列の延長等、幾つか挙げられる。
第2発表:"Malaysia KLEMS: Productivity Performance"
Mazlina Shafi'i (Malaysia Productivity Corporation)・Wan Fazlin Nadia Wan Osman (Malaysia Productivity Corporation)
MALAYSIA KLEMSの概要について説明した。MALAYSIA KLEMSデータベースでは30産業について、産出、付加価値、資本、労働、エネルギー、中間投入などのデータの他、TFPも2000年から2010年の期間について計測している。
付加価値のシェアをみると、鉱業・砕石業が最も大きいことがわかる。付加価値の成長率でみると、サービス産業が最も大きかった。労働の質の成長率についても鉱業の寄与が大きい。一方、資本投入の成長率については、建設業が最も高い。IT関連資本サービスの成長率については、小売業や家財修理業が最も高かった。集計された資本サービスに対する各産業の貢献で見ると、鉱業や行政・国防が大きかった。また経済全体でみると、TFPの付加価値成長率への寄与は徐々に大きくなってきている。産業別にみると鉱業のTFPの寄与はマイナスであった。
計測上の問題としては資本投入については、土地が含まれていないこと、労働投入に関しては、サービス部門の労働の質指数がその他の産業に比べて低いことなどが挙げられる。またR&Dの資本化などの問題も残る。
第3発表:"KLEMS Data Status and Availability in Thailand"
Surapol Srihuang (National Economic and Social Development Board)
Thailand KLEMSデータの構築状況と構築可能性(どのようなデータが入手可能で、不可能なのかなど)について説明した。
利用可能な統計としてはNational Income statisticsの他、1975年以降、5年毎に公表されているIO表がある。この他、Labor Force SurveyやICT I/O Projectなどがある。
中間投入財や労働サービス投入、資本サービス投入については、今後データを入手することで計測可能な変数であるが、現段階では構築していない。また、ICT資本サービスの付加価値成長率への寄与については、今後も計測が難しい。
次に、入手可能な付加価値データ、IO表についても紹介した。労働については、18部門であれば入手可能で、National Income statisticsを用いれば、66部門をKLEMSの32部門に集計可能であることを示した。
Thailand KLEMSデータ構築上の問題の1つは、たとえばIO表の作成に携わる人が4人しかいないなど、統計を構築するための労働力が十分でない点が挙げられる。