開催案内
ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン シカゴ大学教授をお招きし、「能力の創造」についてご講演いただくとともに、関連の研究者からのコメントなどにより議論を深めます。
本講演では、経済学、心理学および神経科学の観点から、経済活動や社会全体で機能する能力の創造について、最近の研究を紹介します。能力は本来複合的で、タスクの内容により、異なる能力の組み合わせが必要です。能力は、親の子育て、学校教育、職場および仲間や指導者によって形成されるスキルであり、また、遺伝も大きな要因になっています。
本研究は、学校や学力テストといった通常の着目点を超えて、より広い意味でのスキル(能力)の概念とその計測方法を提示し、ライフサイクルを通じた能力の進化を分析します。ライフサイクルの段階によって生産的に創造できる能力は異なります。すべての能力創造において生産性が高いのが幼児期です。能力は相乗的に作用し、将来の能力を高めます。能力形成促進のための政策や、貧困、社会的流動性、経済的・社会的機会の分析に対する含意を明らかにします。
イベント概要
- 日時:2014年10月8日(水) 15:30-17:30(受付開始15:00)
- 会場:全国社会福祉協議会灘尾ホール (東京都千代田区霞が関3-3-2)
- 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳有り)
- 参加費:無料
- 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
- お問合せ:RIETI 村上
Tel: 03-3501-8398、Fax: 03-3501-8416
動画配信(YouTubeに移動します)
プログラム・配付資料
15:30 - 15:35 主催者挨拶
15:35 - 16:35 講演 "Creating Capabilities"
James J. HECKMAN (Henry Schultz Distinguished Service Professor of Economics, The University of Chicago)
シカゴ大学ヘンリー・シュルツ特別待遇経済学教授。1973年よりシカゴ大学で教鞭をとる。2000年ノーベル経済学賞受賞。シカゴ大学社会科学部経済研究センター・人材開発経済学センターおよびシカゴ大学ハリススクール社会プログラム評価センターを指揮。シカゴ大学ロースクール教授、アメリカ法曹協会シニアリサーチフェロー、英国財政研究所リサーチフェロー、人的資本と経済的機会に関する世界ワーキンググループ(新経済思考機構の資金提供、ベッカー=フリードマン経済研究所の支援による研究プログラム)のディレクター。1965年コロラド大学(数学科)卒、1971年プリンストン大学経済学博士。
個人やグループのモデルに焦点を当てた経済政策評価における科学的根拠の開発、異質性・多様性・観測されない反実仮想状態に係る諸問題について研究を行ってきた。1990年代初頭、米国のGED資格取得者のその後の労働市場成果に関する先駆的研究は、全国的な注目を集めた。資格取得者に期待される価値に対して現実は大きく劣後していることを見出した。この研究結果は、GED資格取得の意義に関して全国的な議論を巻き起こした。
最近の研究は、人間開発およびライフサイクルを通じたスキル形成に焦点を当てており、特に幼児期の発達の経済的意義を強調している。教育、職業訓練、最低賃金法、差別禁止法、社会的支援、公民権などに関し、政策立案者に重要かつ新しい洞察を与えてきている。
"The Myth of Achievement Tests: The GED and the Role of Character in American Life and Global Perspectives on the Rule of Law"の共編者、"Giving Kids a Fair Chance"の著者であり、300を超える論文を公刊している。1983年ジョン・ベイツ・クラーク賞、2005年ジェイコブ・ミンサー功労賞、2005・2007年デニス・アイグナー応用計量経済学賞(Journal of Econometrics誌)、2006年ユリシーズ・メダル (ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン)、2007年セオドア・W・シュルツ賞(アメリカ農業経済学会)、2008年イタリア共和国大統領金賞(ピオ・マンズセンター国際科学委員会)、2009年子供向け社会政策特別貢献賞(子供発達学界)、2014年フリッシュ・メダル(計量経済学会)をはじめ多数の受賞歴。
16:35 - 16:55 コメント
橘木 俊詔 (RIETI顧問 / 京都大学名誉教授 / 京都女子大学客員教授)
1973年ジョンズ・ホプキンス大学博士号取得。1979 年京都大学経済研究所助教授、1986年京都大学経済研究所教授、2003年京都大学大学院経済学研究科教授、2007年より京都大学名誉教授。2004年RIETI研究主幹、2006年よりRIETI顧問。2014年4月より京都女子大学客員教授、同志社大学客員教授。2005~06年日本経済学会会長。専門分野は労働経済学・公共経済学。
主な著作物:『「機会不均等」論』PHP研究所、2013; 『学歴入門(14歳の世渡り術)』河出書房新社、2013; 『課題解明の経済学史』朝日新聞出版、2012; 『いま、働くということ』ミネルヴァ書房、2011など多数。
山口 一男 (RIETI客員研究員 / シカゴ大学ラルフ・ルイス記念特別社会学教授)
1971年東京大学理学部卒業後、総理府勤務(1971-1978年)、シカゴ大学社会学博士号取得(1981年)、コロンビア大学公共衛生大学院助教授(1983-1985年)、UCLA社会学部助教授・准教授(1985-1991年)を経て1991年よりシカゴ大学社会学科教授、2008年-2012年同学科長。2003年よりRIETI客員研究員。グッゲンハイムフェロー(2001-2002)、オランダ・ユトレヒト大学客員教授(2003年)、慶應義塾大学商学部大学院客員教授(2004年)、NSF常任審査員(2002-2004年)、NIH常任審査員(2005 -2009年) などを兼任。
2003年に米国科学情報研究所(ISI)が社会科学一般の部で世界で最も引用された著者の1人に認定。専門分野は社会統計学、合理的選択理論、社会的不平等、家族と就業。主な日本語の著作物に「男女の賃金格差解消への道筋―統計的差別の経済的不合理の理論的・実証的根拠」『日本労働研究雑誌』2008、『ダイバーシティー』東洋経済新報社, 2008、『ワークライフバランス;実証と政策提言』日本経済新聞社、2009、「ホワイトカラー正社員の男女格差の決定要因について」『日本労働研究雑誌』2014がある。
プロフィールページ
16:55 - 17:30 質疑応答
モデレータ:
市村 英彦 (RIETIファカルティフェロー / 東京大学大学院経済学研究科、公共政策大学院教授)
赤林 英夫 (慶應義塾大学経済学部教授)
1996年シカゴ大学経済学博士課程修了(Ph.D.)。専門は教育の経済学、家族の経済学。
通商産業省職員、世界銀行コンサルタントなどを歴任。現在、慶應義塾大学経済研究所副所長を兼務。2010年から全国の小中学生の学力と非認知能力の成長を追跡する「日本子どもパネル調査(JCPS)」の主設計者である。
論文に"An Equilibrium Model of Child Maltreatment"、"Can Small Class Policy Close the Gap? An Empirical Analysis of Class Size Effects in Japan(共著)"、"Do Education Vouchers Prevent Dropout at Private High Schools? Evidence from Japanese Policy Changes(共著)"、「就学前教育・保育形態と学力・非認知能力―JCPS2010-12に基づく分析(共著)」など。