RIETI政策シンポジウム

Auto Industry Symposium: The 2003 RIETI-HOSEI-MIT IMVP Meeting

イベント概要

  • 日時:2003年9月12日(金)10:00-17:30
  • 会場:法政大学 スカイホール(ボアソナードタワー26F)
  • 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳あり)
  • 議事概要

    延岡 健太郎 (RIETIファカルティフェロー / 神戸大学経済経営研究所教授)

    「3D-CADの製品開発プロセス能力への影響」

    製品開発能力の国際比較 :1980年代においては、IMVPの研究で示された工場の生産性だけでなく、製品開発においても日本企業が欧米企業に対して大きな優位性を持っていたことが、ハーバード大学の研究プロジェクト(東京大学藤本教授・ハーバード大クラーク教授)で実証された。これらの優位性が日本自動車企業の競争力を支えていた。しかし、90年代に入り米国ビッグ3は、日本企業から多くを学習し、業績についても著しく回復していたために、製品開発の生産性においても既に日本企業にかなり追いついたのではとの憶測もあった。
    しかし、90年代終わりまでをカバーした我々の調査(東京大藤本教授、ハーバード大トムケ教授、神戸大延岡教授)によって、日本企業の欧米企業に対する優位性は縮小するどころか、拡大していることがわかった。

    3D-CAD導入の日米欧比較 :日本企業の方がフロントローディングをうまく実施していることが優位性の鍵である。ただし、開発初期段階での問題解決に重要な役割を果たすと考えられている3D-CADを、欧米企業以上に有効に使用した結果ではない。実際には、欧米企業の方が3D-CADの導入は数年先行していた。それを十分に活用するためには、フロントローディングを実施する組織能力が備わっている必要があるが、欧米企業はその能力に欠けていると考えられる。一方で、日本企業は3D-CADを使用しなくても、初期段階のデザインレビューを効果的に実施する組織能力を更に洗練させることによって対応していた。

    日本企業の3D-CAD導入の特徴 :ただし、日本企業における3D-CADの導入が欧米企業から大きく遅れていることにも問題はある。遅れている原因としては、3D-CADを導入することを優先するツール主導型ではなく、フロントローディングの実質的な改善を主眼に置いたプロセス主導型の導入戦略を日本企業がとっていることにある。3D-CAD導入後の最初のプロジェクトでは、一般的に総工数が増加する傾向がある。そのため、日本企業はすべての業務にわたり一挙に導入することはしない。更には、現場からの提案が優先されるために、特に3D-CADの導入によって設計負荷が大きく増える設計部門が主導的に導入する場合には、導入が遅れる傾向が強くなる。

    結論 :日本自動車企業の製品開発プロセス能力における欧米企業に対する優位性は、近年まで維持されている。欧米企業は3D-CADを積極的に導入し追いつこうとしている。しかし、日本企業は組織能力を更に鍛えることによって、差が縮小するどころか拡大さえしている。日本企業の3D-CAD導入の遅れに問題がないわけではない。組織能力に依存しすぎる傾向が見られ、最新ツールも合わせて有効に活用する戦略が求められる。