イベント概要
議事概要
John Paul MACDUFFIE (IMVP Co-Director / Associate Professor, University of Pennsylvania)
IMVPの概況
今日のIMVPミーティングの目的は以下の通りである。(1) IMVPの歴史とビジネスモデルを紹介する。(2) IMVP第4期の研究テーマのポイントを紹介する。(3) IMVPの進行中の研究プロジェクトの概要を紹介する。(4) IMVP研究者と日本の自動車産業の交流を深める。
そもそもIMVP(International Motor Vehicle Program)とは何か。 IMVPはMITをセンターとする大学の研究ネットワークである。IMVPは1980年以来、20年以上の歴史を持つ。これまで20年以上、世界スケールで自動車産業の研究をやってきた。これまで、以下の4つの段階(フェーズ)を経てきている。
フェーズ1: | 世界戦略と貿易問題 |
フェーズ2: | マスプロとリーン生産の比較 |
フェーズ3: | リーン生産の普及 |
フェーズ4: | グローバル・バリュー・チェーンと新技術がメインテーマ |
その間の出版物としては以下のようなものがある。
Phase 1: | "The Future of the Automobile "(1984) |
Phase 2: | "The Machine The Changed the World" (1990) |
Phase 3: | "Prices, Quality, & Trust: Inter-firm Relations in Japan and U.K. "(1992) "Thinking Beyond Lean: Multi-project Product Development" (1996) "After Lean Production: Evolving Employment Practice" (1997) "The Evolution of a Manufacturing System at Toyota" (1999) "Clockspeed: Winning Industry Control" (2000) |
Phase 4: | Second Century: Reconnecting Customer and Value Chain (2004) |
IMVPは、スポンサーから研究資金をいただき、世界中の先端研究者のネットワークに資源を配分する。スポンサーはその研究成果を世界に先駆けて入手する権利を持つ。
2001年、IMVPは、その第4ステージのテーマとして、次の3つの領域にしぼった。
(1) | 企業ネットワークをマネージするベンチマーキング |
(2) | E-オートモーティブ:情報技術のインパクト:購買、販売、テレマティクス |
(3) | 持続性、環境対応の新技術 |
さて、自動車産業はこれからどこへ向かうのか? IMVPはいつも、「次は何が起こるのか」に集中してきた。今のトレンドは、「流行り物にとらわれず、基本に帰れ」である。
現在のIMVPのプロジェクトは、次のようなものがある。:ビルト・トゥー・オーダー(エンドユーザー対応の注文生産)のあり方;製品アーキテクチャとサプライヤーの開発参加。
サプライヤー・パック(組立メーカーの近くにサプライヤーが立地するシステム);B2Bの電子調達;テレマティクス(車載の情報適性技術)の将来;ディーラー間の相互学習による改善活動。組立工場競争力比較調査(第3ラウンド)。
今後の研究プロジェクトとしては、次のようなものがつけ加わる:カスタマーの声を集約化する技術;水素経済のインパクト;ラテンアメリカの自動車産業:モジュール化とプラットフォーム戦略;アライアンスによる製品開発;ISO9000とプロセス・マネジメント。
IMVPのリサーチの方法的な特徴は以下の通りである。
- 一次データの重視。フレームワークは後から。
- バリューチェーンにそったトータルシステム分析。
- グローバルな現状分析、定性分析が先、その後に定量分析。
- 測定尺度の開発を重視する(組立工場比較調査の伝統)
- 将来に関するシナリオ分析
IMVPはもはやMITのみのセンターではない。世界レベルのネットワークである日米欧の以下の大学が参加している:マサチューセッツ工科大学(MIT);ペンシルベニア大学ワートン校;ビッツバーグ大学;カーネギー・メロン大学;ケース・ウェスタン大学;ミシガン大学;ロチェスター工科大学;ノースウェスタン大学;東京大学;一橋大学;神戸大学;法政大学;オクスフォード大学(イギリス);ケンブリッジ大学(イギリス);INSEAD(フランス);マンハイム大学(ドイツ);パドバ大学(イタリア)。
以上をまとめるならば、IMVPは世界の自動車産業に以下のような形で貢献していこうと考えている。
IMVPは自動車産業のダイナミクスや企業の歴史や発展軌道に対して狭い知見を持つ。また、それに基づいて次に何が起こるかをメリハリのきいた形で予測していた。IMVPは、いわゆる「はやりもの」には乗らない。基本に戻った重要なテーマを追求する。幸い、IMVPは世界中の一流大学、一流の研究者をひきつける求心力を保っている。そして、IMVPは、その領域を広げつつ、ユニークなアウトプットを作り出し続けているのである。
文責:藤本 隆宏