イベント概要
議事概要
Yannick LUNG (Co-Director, GERPISA, France)
「GERPISAの紹介と近年の研究成果報告」
GERPISAはパリに本部を置く自動車産業研究者の国際的ネットワークであり、毎年パリで研究会を行っている。1992年の設立以来IMVPとも研究交流、意見交換などを続けているが必ずしも全ての面で意見が一致しているわけではない。
これまでの研究プロジェクトから3つの結論を出すことが出来た。日本型生産システム、グローバリゼーション、モジュール化といった新たな傾向がどのように発生し、普及していくのか、そしてその発現形態はいかなるものなのかについて注意深く見守っていく必要があると考える。
GERPISAの最初の研究プロジェクトは日本型生産システムの研究であった。「日本型」といっても実際にはトヨタ、ホンダ、日産といった各社の生産管理、製品管理、サプライヤーとの関係性などはそれぞれ大きく異なっている。加えてモジュール化やサプライヤーパークの形成といった現象が各社のシステムとどのような関係性を持ちつつ存在しているのかを分析していかなければならないのである。トヨタモデル、ホンダモデル、スローンモデルといった各社の生産モデルのそのルーティン、発現形態は常に進化、変化しており、環境への適応を続けている。そしてその進化は必ずしも収斂を意味してはいない。多様性は常に再生されているのである。自動車産業の将来という点では各社の戦略も大きな影響力を持っている。このような点からも将来の形は複数あると考えるべきであろう。
「自動車業界」に対するアプローチの視角を拡大する必要性もある。日本メーカーについての研究から得られた知見をもとに欧州メーカーはサプライチェーンの統合を推進したが、今後はさらに広い全体的視野に基づいて考察していかなければならない。現在は「何を、どこで、どうやって作るのか」といった側面に加えてサービスについての研究を進めている。これは品質や生産性といった側面で各社の差違が収斂しつつあり、新車販売からのみでは思うように収益を上げられなくなってきているためである。これに伴い新たな競争の舞台がサービスなどの分野に移行しつつあるのだ。たとえばフォードやGMはその収益の約半分をファイナンスから得ている。全てのメーカーがファイナンスから収益を得る事が正しいとは考えないが、持続的ビジネスモデルを求めてeサービスなどの新たな分野へ進出することが必須となってくるだろう。自動車産業の将来については技術的側面のみならず関連する全ての要件を考慮していかねばならないのである。
文責:東 秀忠