RIETI政策シンポジウム

Auto Industry Symposium: The 2003 RIETI-HOSEI-MIT IMVP Meeting

イベント概要

  • 日時:2003年9月12日(金)10:00-17:30
  • 会場:法政大学 スカイホール(ボアソナードタワー26F)
  • 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳あり)
  • 議事概要

    Charles FINE (Chrysler Leaders for Manufacturing Professor, MIT)

    "Opportunities when Value Networks Collide: Telematics at the Intersection of Automotive and Telecommunications"

    2000年に“Clockspeed”という本を発売したが、この本では産業や技術の進化のスピードをClockspeedと定義し、それがそれぞれ異なるという点を指摘している。たとえばエレクトロニクス・テレマティックスのClockspeedは非常に速く、ボディ、エンジン技術のClockspeedは相対的に非常に遅い。自動車という製品はこのような相異なるClockspeedのミックスで形成されている。今後の自動車産業においては非常に速いClockspeedを持つテレマティックスへの対応が重要になってくるであろう。このテレマティックス産業におけるバリューチェーンは半導体メーカーからコンテンツ産業、自動車メーカーを含む広範なものとなる。このバリューチェーンの中でパワーと利益を得るのは誰であろうか。そして自動車メーカーがパワーを得るためにはどうすべきであろうか。
    ここで、Viral Communicationsを提案する。これは現在インターネット上で行われているピアツーピア(P2P)コミュニケーションを無線ベースで行うモバイルピアツーピア(mP2P)が前提となったコミュニケーション形態である。このネットワーク上ではオープンな、標準化されたプロトコルの下で各無線通信デバイスが発信、受信、ルーティングを行い、情報は発信元デバイスから受信先デバイスへと直接伝達される。距離が大きく離れている場合にはその間に他のデバイスを足がかりとする、いわばインターネットと同じ形で情報が伝達される。このViral Communicationの世界にはネットワークキャリアは存在せず、いわば無線デバイスを提供する企業がネットワークを所有する形態となる。ネットワークの提供者として候補に挙がるのがマクドナルドやスターバックス等の外食産業、ノキア等の携帯電話メーカー、そして自動車メーカーである。
    この、Viral Communicationの世界では自動車メーカーのプレゼンスが想像以上に大きくなると考えられる。なぜなら、設置コストが比較的安価な上にインストールベースでは各社数百万台程度と携帯電話メーカーほどではないにせよ外食産業に比せば圧倒的に大きく、通信デバイスのエネルギーリソースに関しては携帯電話メーカーのそれよりも圧倒的に有利だからである。Viral Communicationが達成されれば自動車は自己診断プログラムやエンターテインメントコンテンツ等を至る所で自由に入手することが可能になる。しかしその一方で、運転制御の基幹ソフトウェアは外部からの進入に対して完全に防護されていなければならない。このため、制御部分とテレマティックス部分でソフトウェアのアーキテクチャは大きく異なることとなる。
    このような産業・テクノロジーのロードマップのドライビングフォースは経営戦略、技術、産業構造、資本市場、顧客ニーズなどさまざまあるが、これらは互いにかみ合った歯車の比喩で表現できる。加えて、各産業のバリューチェーンにおけるダイナミクス、つまり各要素に与える影響の大きさについては各歯車の歯数で表現できるだろう。

    文責:東 秀忠