経済産業研究所・中信出版社『比較』編集室共催セミナー

制度変換期の日本経済

イベント概要

  • 日時:2003年8月29日 9:00-12:30
  • 会場:北京京倫飯店(北京)
  • 主催:経済産業研究所・中信出版社『比較』編集室
  • モジュール化理論の中国における応用

    栄敬本 (『比較』編集委員、中央編訳局上席研究員、『経済社会体制比較』雑誌編集長)

    我々は90年代から比較制度分析(CIA)を紹介してきましたが、中国の制度変遷において、この方法にはどんな特徴があるのでしょうか。最近、青木教授は著書『比較制度分析』の中で5つの点にまとめられました。第1に、制度変遷は内生的なもので、外から強制的に押し付けられたものではないということです。第2に、経路依存性(path dependence)が存在し、それによって自国の歴史から離れることはできないということです。第3に、制度の相互補完性(complementary)です。第4に、制度変化は情報が誘導する性質のものであることです。たとえば、今日、青木教授は我々にGNC(From GNP to Gross National Cool:GNPから国民総クールへ)というとても重要な情報をお話しされました。第5に、制度変化は相互に動く、つまり政府と民間が相互に動くということです。私は青木教授の観点に全く賛成です。彼の話の内容は小さな具体的問題ではなく、いくつかの大きな問題であり、我々の研究の方法論的な問題にまで関わるものです。

    私はこの比較制度分析という方法には普遍的実用性があると思います。各種業界の業務はみな改革のさなかにありますが、我々の誰もが制度変遷に直面することがあるでしょう。この問題を研究する際、上記の5つの面を考えてみてはいかがでしょう。たとえば、制度は必ず内生的で、相互に動くこと、第2に自国の歴史、経路依存性、第3に情報の問題、最後に民間としての立場と政府の相互関係を考慮する必要があります。

    最も重要なことは、ゲーム理論に基づき、青木教授が制度をshared belief(共有予想)と定義されたことです。私はこの方法には実用的価値があると思います。たとえば、我々の改革が実に多岐にわたり、事情が複雑で、どう改革すればいいのかという場合、私なら彼のモジュール化理論を運用して、小さなところから始めることができると申し上げます。我々は比較的1つの村や1つの郷に関心を持っていますが、こういう単位ではない何か他のものに関心を持ってもよいわけです。モジュール化、つまり小さなところから改革を始めることは、新しい発想を提供するうえで大いに役立ちます。

    我々は無錫に比較研究所を設立し、主に2分野の実験を行っています。1つは、中小企業をどう発展させるか、商工会議所などの商業団体をモジュールのように作用させるためにどうするか、もう1つは、郷鎮末端組織の政治体制改革、党の末端組織をどのように改善するかということです。日本で一番改革が難しいのは多元的な官僚体系ですが、中国の党主導下の政府(party-state)体制はまたどのように改革すればよいでしょうか。党自身の改革が重要です。