岩波講座 日本経済の歴史5 現代1 日中戦争期から高度成長期(1937-1972)

表紙写真
執筆者 編集:深尾 京司/中村 尚史/中林 真幸
出版社 岩波書店 / 3800円 
ISBN 978-4-00-011405-9
発行年月 2018年1月

内容

経済成長と産業構造高度化の時代〜長期的課題への歴史からの示唆

本書は、岩波講座「日本経済の歴史」シリーズ全6巻のうちの第8巻である。同シリーズは、中世(11世紀〜)以降、現在に至るまでの超長期的な日本経済の変化を鳥瞰するもので、本書は日中戦争期から高度成長期まで(1937年〜1972年)の時期をカバーしている。

本書の対象期間は、第二次世界大戦という大きな断絶を挟んで、日本経済が高い成長を遂げ、欧米諸国にキャッチアップしていった時代である。この期間を通じて、第一次産業のシェアが低下する一方で製造業のシェアが拡大し、日本の産業構造・就業構造は大きく変化した。製造業の中でも、近代の工業化を牽引した繊維産業が主役から降り、機械工業を中心に重化学工業化が進展した。本書は、この時代を、成長とマクロ経済、政府の役割、所得と資産の分配、労働と人口、金融システム、農業と土地、鉱工業、商業とサービス、という8つの角度から論じている。

編者の1人である深尾京司氏のほか、「通商産業政策史」の編纂委員長だった尾高煌之助氏、RIETIのフェローを現在務めている数名の研究者が、本巻の執筆に参画している。本書のユニークな点は、経済史の専門家だけでなく、経済学の実証分析を手掛ける研究者が中心になっていることである。

現在の日本経済は、生産性向上、第四次産業革命、働き方改革、地域経済の活性化、経済格差拡大への対応などさまざまな課題に直面している。これら長期的課題への政策的な対応を考える際、急速な労働生産性上昇、産業・貿易構造の高度化、日本的労使関係の形成、太平洋ベルト地帯への人口移動、所得分配の平等化の進展といった特徴を持つこの時代にはさまざまなヒントがあり、本書は政策の企画立案の視野を拡げる上でも有益である。

森川正之(副所長)