著者からひとこと

サービス産業の生産性と日本経済:JIPデータベースによる実証分析と提言

編者による紹介文

失われた30年と呼ぶことがふさわしい過去30年間の日本経済では、他の多くの先進国と比較して労働生産性の上昇が極めて緩慢で、このため実質賃金率はほとんど上昇しませんでした。日本がこの長期停滞から脱するには、労働時間の7割以上が投入されているサービス産業の生産性を上昇させることが肝要です。

このような問題意識から、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の「東アジア産業生産性」プロジェクトでは、科学研究費基盤研究(S)「サービス産業の生産性:決定要因と向上策」プロジェクトと協力して、過去6年にわたり、サービス産業の生産性の決定要因と向上策を研究してきました。本書ではその最新の成果を報告しています。また最近、RIETIと一橋大学経済研究所が共同で作成してきた日本産業生産性(JIP)データベースを2008SNAに対応する形で全面的に改定・更新しましたが、本書第1章では、このJIPデータベース構築作業の詳細を報告しています。今回の更新で充実度が増したJIPデータベースにおけるサービス産業の生産性の計測結果を用いて、医療、教育、人材紹介といった諸外国に比べて労働生産性が低水準な分野のわが国の現状を分析するとともに政策提言を行っています。

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深尾 京司