著者からひとこと

地方創生のための地域金融機関の役割

編著者による紹介文

地域金融の現場の声に基づき金融仲介の質の向上策を提言

本書は、研究プロジェクト「地方創生に向けて地域金融に期待される役割-地域経済での雇用の質向上に貢献するための金融を目指して-」(2015年7月〜2017年6月)の研究成果をまとめたものである。

地域経済を支える中小企業の生産性を向上させ、地方創生を実現していくために地域金融機関への期待が高まっている。しかし、それにもかかわらず、地域金融の現場では顧客を「育てる金融」が十分に展開できていないとの批判が多い。その理由を現場のレベルで詳細に探り、あるべき姿に向けて具体的な改革策を提案するために、本研究プロジェクトでは「現場からみた地方創生に向けた地域金融の現状と課題に関する実態調査」を2017年1月に実施した。

この調査の特徴は、地域金融機関の支店長個人に対して調査を実施している点にある。営業現場の前線を熟知している支店長を調査対象にすれば、地域金融機関の本部で考えていることが実際に現場で実行されているのか、また、できていないとすればその原因は何かについて知ることができると考えたからである。具体的には、全国の地域金融機関の7000人の支店長(全支店長の約4割)に対してアンケート調査票を送付し、約3000人から回答を得ることができた。本書の第I部ではこのアンケート調査に基づいて、地域金融の現場の事業性評価への取り組みの現状と取り組みを進めるための課題を明らかにし、人事評価改革や外部専門家等との連携の強化などの処方箋を提示している。金融機関の本店に対する調査はいくつもあるが、これだけ多数の地域金融機関の支店長の声を集めた調査はほとんど例のないものであり、関心を持って読んでいただけるものと思う。また、本書には、われわれの分析に対する実務家的な観点からのコメント論文5本を収録しており、調査結果に対する実務家なりの見方についても知ることができる。

本書の第II部では、研究会メンバーによる地域金融の政策問題を扱った論考を収録している。具体的には、東日本大震災からの復興過程にある東北地方で地域金融機関が積極的に対応している事例を紹介した相澤論文、金融機関の競争が開業促進や廃業抑制に寄与していない可能性を明らかにした播磨谷・尾崎論文、リーマンショック時の緊急保証制度が中小企業の投資に好ましい影響を持っていたことを明らかにした小塚論文、金融機能強化法が担保・保証に依存しない中小企業貸出を促進したことを明らかにした永田論文などを収録している。

本書は、全国の地域金融機関の金融仲介機能の質向上の取り組みにとってはもちろんのこと、それを促す政策当局の取り組みにとって大いに参考になるはずである。(編著者)

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