著者からひとこと

現代日本企業の国際化-パネルデータ分析

編者による紹介文

国際貿易理論に新たな地平を拓く一冊

2000年以降、国際貿易・海外直接投資(FDI)の研究は、国・産業・財レベルから企業レベルに深まり、理論・実証両面で大きく進展した。貿易・直接投資の担い手である企業が生産性をはじめさまざまな点で不均質な存在であることに注目されたからである。本書は、生産性において異質的な企業がどのような要因によって国際化しているかについて、我々が理論・実証両面から行ってきた研究の成果を集約したものである。本書の特徴は、欧米における研究と並んで、日本企業を対象とした大規模なパネルデータを用いて企業の異質性と国際化に関する実証研究を行い、その成果を盛り込んだことにある。各章では、国際化する日本企業は欧米企業と同様に生産性が高く規模の大きな企業であるが、それだけでなく、日本企業の国際化には、産業特性、国際市場に関する知識・経験など生産性以外の企業特性、仕向国の市場規模・ポテンシャル、現地マネジャーとのマッチング、契約環境をはじめとする法制度の整備状況が影響を与えていることを理論分析と大規模なデータに基づく綿密な実証分析によって明らかにしている。また、企業の異質性と国際化に関する理論・実証研究の世界の潮流と今日的課題に関してもレビューしている。本書の内容が、グローバル化する経済を読み解く上で、また、国際貿易研究に新たな地平を拓く上で少しでも貢献するものとなれば、執筆者一同、望外の喜びである。

著者(編著者)紹介