著者からひとこと

資源経済学への招待
ケーススタディとしての水産業

編者による紹介文(本書「はじめに」より)

水産業の持続的発展のために

近年、我が国の水産資源量の減少と国際経済環境の変化に伴って、水産業の国内生産の減少は著しく、新たな施策が求められている。水産資源の持続的利用と水産業の持続的発展のために、水産資源に関わる政策の評価分析は急務である。

本書は、我が国の水産資源の持続的利用に資することを目的に、水産資源管理に関わるパフォーマンス評価と制度分析について、主に経済学的観点から研究を行う。従来、国内の水産資源に関しては、主に生物学的な資源管理の観点から評価分析されており、経済学的視点は重視されていなかった。水産資源管理制度の経済的効果を明らかにすることで、さまざまな制度を経済学的観点から評価することが可能になり、水産資源管理制度の設計に資することが期待される。

水産資源管理制度に関わる経済分析は、政府の規制改革会議の第2次答申(2007年12月)で水産資源管理の改革について明確に触れられていることから分かるように、政策提言の時機を失しないためにも早期に取り組むべき重要な研究である。本書では、水産資源管理制度に関わるマクロ・レベルの計量的評価分析を行い、制度の全体像を的確に把握する。その基本分析の精度を高めるために、ミクロ経済学的基礎を備えた理論分析を行うとともに、水産業のミクロ・レベルのデータを蓄積・整備して、地域や漁業主体等についてのより精度の高い政策提言を行っている。本書は、改革論議に資する計量的な評価分析や具体的な政策提言を行い、経済学的観点を重視した水産資源管理制度の方向性を提示する役割が期待される。

寳多 康弘・馬奈木 俊介

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