著者からひとこと

日本企業の対中投資

日本企業の対中投資

日本企業の対中投資

  • 著:柴生田 敦夫

著者による紹介文(本書「はじめに」より)

中国への事業進出の際に必要となる、中国社会のさまざまな動向や側面について考察した書

日本と中国の経済関係は、中国経済の高成長を背景に、近年緊密化の度合いをますます高めている。貿易面をみると、日中の貿易総額は、2007年には2367億ドルと、日米の貿易総額(2142億ドル)を上回り、日本にとって中国が第1位の貿易相手国となった(図2~3参照)。2008年の貿易総額は前年比12.5%増の2664億ドル(輸出入別にみると、日本の対中輸出は同13.8%増の1241億ドル、輸入は11.5%増の1423億ドル)と、前年を上回る伸び率を示し、10年連続で過去最高を更新した(なお、2009年の貿易総額については、2008年を下回るものとみられている)。

図1:中国の対外貿易の推移
図2:日中貿易の推移
図3:日本の貿易総額に占める中国、米国のシェア

日中貿易を品目別にみると、日本からは、中国に対し、高付加価値な部品、原材料、機械類などを主に輸出している。そうした部品・原材料・機械類を使って中国において組み立てが行われ、主に機械機器、繊維品などの完成品の形で日本に輸入されることで、経済の相互補完関係が構築されている。日中貿易の増加の背景には、日本企業による活発な対中直接投資がある。日本の対中直接投資額は、日本の財務省統計で、2005年が7262億円、2006年が7172億円、2007年が7305億円と3年連続で7000億円を超えた。2008年は8.3%減の6700億円と減少に転じたが、この要因としては、2007年に邦銀の現地法人設立が相次いだことに対する反動などから、金融・保険業向け投資が落ち込んだことがある。こうした要因を除けば、日本の対中投資は引き続き堅調に推移している。従来、日系企業の対中投資は、低廉で豊富な労働力の活用を目的とした輸出志向型の投資が多かったが、最近では中国市場参入を目的とした内需志向型の投資も増加している。

図4:中国の対内直接投資の推移

以上のように、貿易・投資の両面から日中経済の緊密化が増している。急速な経済成長を続ける中国に対して中国脅威論を唱える向きもあった日本の産業界は、現在では中国経済の活力を自社のビジネスの活性化に生かす方向に転換しつつある。しかし、日中経済関係が緊密化し、日系企業の中国に対するコミットが高まっていることは、中国経済の動向が日系企業の経営におよぼす影響度がますます大きくなっていることを示している。こうした背景から、日系企業は対中ビジネスを拡大させる一方で、中国リスクに対する関心も一層高めている。

本稿は、前半では、上記のような現状にある日中の経済関係を直接投資の観点から考察する。まず、日中の投資関係の推移を時系列で概観する。次に、現在の動きとして、2007年および2008年の対中直接投資の動向を分析する。その上で、中国の対内直接投資に占める日本の地位を検証する。さらに、対中直接投資に関連するいくつかの論点についても考察する。最後に、日中投資関係の将来について展望する。後半は、スタイルを大きく変え、まず、日系企業が中国での実際の事業活動の際に考慮すべき個別の各要素につき、現状をトピックスとしてわかりやすく概観する。さらに、中国で事業活動を行うに際してぜひ理解しておくべき中国社会のいろいろな動向や各側面について考察する。あわせて、各国の対中投資、および、中国と隣接国との結節点たる各中国辺境地域の開発と進出日系企業の活動等のうち、いくつかの特徴的な事例を短く紹介する。全体として、日中経済関係の今後の多面的かつ柔軟な展開に向け、中国で事業活動を行う方々を中心に、何らかの参考にしていただければ幸いである。あわせて、統計数字の改訂等を含め、状況の変化が生じた場合には御容赦いただきたい。なお、本書における意見、見解等はすべて筆者の個人的なものであり、筆者の属する組織または過去に属した組織の意見、見解等ではないことを、あらかじめおことわりしておきたい。

柴生田 敦夫

著者(編著者)紹介

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柴生田 敦夫

東京大学法学部、カリフォルニア大学経営大学院(UCLA)卒業。1977年通商産業省入省。地球環境対策室長、在米日本国大使館参事官、米州課長、製造産業局参事官(総合調整担当)、中小企業庁政策調整課長、貿易管理部長等を歴任。2005年 日本貿易振興機構(JETRO)北京センター所長、 2008年 経済産業研究所(RIETI)上席研究員。現在 経済産業省貿易経済協力局長。