著者からひとこと

企業福祉の制度改革-多様な働き方へ向けて

企業福祉の制度改革-多様な働き方へ向けて

経済政策分析シリーズ6
企業福祉の制度改革-多様な働き方へ向けて

  • 編著:橘木 俊詔、金子 能宏

編著者による「はしがき」より

企業は福祉にどこまで関与すべきか

21世紀に入り、拡大するEU、台頭する中国経済など国際経済情勢の変化とわが国の少子高齢化の進展に伴い、日本経済の動向に不透明さが増している。そうしたなかで、企業環境の変化に対応して安心して暮らせる条件について、人々はますます関心を寄せつつある。

本書は、このような人々の関心に答えるべく、多様な働き方の可能性や引退後の生活保障に関わるセーフティ・ネットのあり方について、近年の労働市場の変化やコーポレート・ガバナンスの動向を踏まえながら論じたものである。具体的には、独立行政法人・経済産業研究所における「企業の経営環境とセーフティ・ネットに関する研究会」(2001~2002年度)の研究成果をもとにコンファランスを実施し、そこで得られたコメントを踏まえて改訂した論文を収めたものである。

本書の第1部は、わが国の社会保険代行機関の特徴とその意義について考察するとともに、国際比較の観点も交えて、セーフティ・ネットとして企業は福祉にどこまで関与すべきかという根本問題について問題提起を行っている。第2部では、企業の福利厚生制度としてはじまり、その後育児休業法など法定化されていった育児と就業の両立支援策に関わる問題の現実と今後の展望を、育児休業制度の企業への影響や、自立した女性の働き方を視点に論じている。第3部では、退職給付のあり方と確定拠出企業年金の望ましい水準について考察している。さらに、企業年金基金や機関投資家とコーポレート・ガバナンスの関係について、わが国の現状とアメリカの動向を踏まえた考察を行っている。

もとより、本書の論考が近年の企業環境の変化に対応したセーフティ・ネットすべてのあり方や、その問題を取り上げているわけではない。しかし、本書に収められた論文は、日本経済の再生に関わる労働市場や金融市場の諸問題とも関連するセーフティ・ネットのあり方を論じている点で、企業活動とも関わり合う重要な問題を取り上げているといえるだろう。人々が安心して働き、家庭生活を送りながら日本経済の担い手になるひとつの条件として、今後セーフティ・ネットはどのように姿を変えていくべきなのか、その一端を読者に示すことができれば幸いである。

2003年6月
橘木 俊詔
金子 能宏

著者(編著者)紹介

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橘木 俊詔

経済産業研究所ファカルティフェロー、京都大学大学院経済学研究科教授。ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学助教授を経て現職。主な著書・編著書に『ライフサイクルの経済学』、『セーフティ・ネットの経済学』等。

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金子 能宏

元経済産業研究所客員研究員、国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部室長、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科客員助教授。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(一橋大学)。主な著書・論文に『企業年金ビッグバン』共著、「公平性の基準と厚生年金改革の効果」等。