調査の目的
公設試験研究機関(以下公設試)は地域における農業、工業等の企業、自営業者の生産性改善に重要な役割を果たしてきました。公設試は日本が世界に誇る独創的な地域イノベーション政策であり、米国でも公設試を模倣した制度が取り入れられており、アジアでも同様の動きがあります。しかし、2000年以降、公設試の予算と定員の継続的な削減が行われ、公設試がこうした重要な役割を維持していくことが困難になりつつあると言われています。この一因として、公設試が地域経済への貢献を行う重要な経路である技術相談の役割が、国や自治体に十分理解されていない点があると思われます。
技術相談は利用者の技術的問題の解決、生産性の向上に大きな貢献をするだけでなく、さらなる製品、工程の開発への入り口としての働きをすることも少なくありません。しかしながら、この地道な活動は特許の取得、ライセンスに基づく新商品開発のように喧伝されることもなく、その成果が目につきにくいため、公設試の地域経済への多大な貢献が国や自治体に過小評価されているとも考えられます。現時点では、工業系公設試の技術支援活動の大半を占める技術相談に関する体系的なデータが存在しないため、その重要性を公設試外部へ説明し、効果的な制度の設計を行うことが困難な状況にあります。公設試の技術相談の実態とその地域経済への貢献についてデータを収集・分析し、その意義を社会に広く訴えかけるために、「工業系公設試験研究機関における技術相談に関するアンケート調査」を実施しました。
調査概要
- 調査対象
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工業系公設試験研究機関のうち、153機関
- 調査方法
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郵送調査
- 実施時期
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平成27年(2015年)10月~11月
- 回収数(回収率)
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111件(72.6%)
- 主な調査項目
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技術相談件数、相談内容、解決時間、解決方法等